産総研は2013(平成25)年度から東日本大震災被災3県(岩手、宮城、福島)の企業との共同研究で再生可能エネルギー関連の技術やアイデアを事業化する取り組みを進めている。福島再生可能エネルギー研究所が開設された2014(平成26)年度以降は研究所の設備を活用して関連機器の試作や評価を行っている。2014(平成26)年度は、郡山市のアサカ理研の「太陽電池などの性能評価」研究をはじめ、県内の7社8件を含む3県の11社12件を採択した。以降、毎年十数件から二十数件を採択し、2021(令和3)年度までに合計168件を支援している。被災地の企業単体だけでなく、被災地の企業が核となって構成する共同企業体(コンソーシアム)の再エネ関連事業を重点的に支援し、新たな産業創出を図っている。既に実用化、商品化に成功した例もある。
スマートシステム研究棟で進むパワーコンディショナー(電力変換装置)の性能試験への期待が高い。パワーコンディショナーは太陽光などで発電した直流電力を家庭などで使用する交流電力に変換する装置。各メーカーや研究施設が開発したパワーコンディショナーの性能や安全性を研究棟で評価しており、気温や湿度などを変えて過酷な環境をシミュレーションしたり、世界各国の電気系統を再現したり、条件をさまざまに変えられ、次世代製品の実用化に役立てている。
2021(令和3)年にはトヨタ自動車、豊田中央研究所とカーボンニュートラル実現に向けた共同研究に乗り出した。車載用高効率太陽光発電システムの開発や水素を「作る、運ぶ、使う」ための要素技術の開発などを進め、太陽電池や太陽光発電システムの変換効率向上、低コスト化などを追求している。