(6) 公示地価の変遷

 1992(平成4)年以降、下落を続けていた福島県内の地価は、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の影響が色濃く出て、直後の2年間は歯止めがかからなかった。国土交通省が毎年3月に発表する1月1日時点の公示地価は、震災後初の発表となった2012(平成24)年、県内の平均変動率が全国よりも大きく落ち込んだ。全国平均の住宅地マイナス2.3%、商業地マイナス3.1%に対し、県平均は住宅地マイナス6.2%、商業地マイナス7.2%で、特に郡山市では住宅地がマイナス8.1%と県内最大となった。放射線の問題で県外資本の飲食店や事業所の閉鎖、一時休業が増えた影響が出た。

 翌2013(平成25)年には帰還困難区域からの避難者の住宅需要で、いわき市など一部地域で宅地価格が上昇する。県内全体では2014(平成26)年、全用途の平均変動率が前年比で22年ぶりに上がった。プラス0.8%の変動率は全国4位で、被災者の住宅移転や企業や商業施設の復興需要が影響したとみられる。郡山市は住宅地がプラス1.4%、商業地がプラス0.9%、工業地がプラス1.3%で全用途平均ではプラス1.3%だった。県内の標準地価の価格トップは住宅地が郡山市神明町のホテルハマツ北側で、1平方メートル当たり7万3,500円。商業地は郡山市駅前のかんのや郡山駅前ビルの1平方メートル当たり31万7,000円だった。

 郡山市内の地価の上昇は2014(平成26)年から2020(令和2)年まで続いていたが、2021(令和3)年、新型コロナウイルス感染症による土地需要減退が商業地に現れる。住宅地は0.4%増と前年比プラスを継続したが、商業地は前年比でマイナス1.2%となり、全用途平均では前年比プラスマイナス0だった。

 (注)本文中の「地価」は毎年1月1日時点の評価額を基に3月ごろに国が公表する公示地価を示す。新型コロナウイルス感染症の地価への影響は2020(令和2)年春ごろから出始め、9月に県が発表する基準地価は2020(令和2)年から下落に転じた。