(4) 工業被害

 郡山市が郡山商工会議所、郡山地区商工会広域協議会、郡山中央工業団地会、郡山食品工業団地協同組合とともに実施した「令和元年東日本台風 被災事業者調査(2020(令和2)年10月23日公表)」によると、何らかの被害があった調査対象事業者645社のうち532社が回答し、被害額は625億6,200万円に上った。調査基準日にした同年9月30日までに全面操業した事業者は489社で、一部操業は36社、市外移転や廃業は7社だった。

 同調査によれば、郡山中央工業団地内の企業の被災が目立つ。立地する企業の9割を超える271社が被災し、被害額は全体の85%を締める528億8,400万円になった。一部の企業では防水壁の設置などを進めたが、設備投資に踏み切れない事業者も数多かった。行政に求める支援の設問では、「河川改修などの治水対策」を求める回答が90%以上になった。

 中央工業団地に立地していた日立製作所郡山事業所は、台風被災から2ヵ月たった2019(令和元)年12月、従業員の安全確保などを理由に県外への移転を決めた。翌2020(令和2)年3月には製造の一部門が事業を停止、その後順次移転が進み、完全撤退した。

 立地企業の多くでつくる郡山中央工業団地会は2020(令和2)年1月、郡山商工会議所とともに国と県に窮状を訴え、敷地のかさ上げなど水害対策への補助を要望した。工業団地会は同年2月には、市に対して配水管の逆流防止対策などを要望、8月に国交大臣・赤羽一嘉が被災地視察に訪れた際には阿武隈川、谷田川の早急な治水対策を求めた。さらに2021(令和3)年11月には、市に対して治水対策を要望するなど遅々として進まぬ対策に再三にわたって声を上げている。国は2028(令和10)年度までに本県だけで1,463億円を投じ、阿武隈川の本川と支川の抜本的な治水対策と流域対策が一体となった「令和の大改修」を進めている。