郡山市街地は、過去(1986(昭和61)~2013(平成25)年)の27年間で15回の浸水被害に見舞われ、平成22年7月豪雨時も床上62戸、床下141戸の浸水被害が発生した。近年、局地的豪雨が顕在化し、甚大な水害が多発しており、福島県での時間雨量50㎜以上の降雨の観測回数が増加している。(郡山市総合治水対策連絡協議会(2014)『郡山市ゲリラ豪雨対策9年プラン』)。
気象庁によると全国1,000地点当たりで計測した1時間に50㎜以上の豪雨発生回数の平均は、1976(昭和51)年からの10年間と比べ、2004(平成16)年からの10年間は約1.4倍に増加している。市内では2008(平成20)年からほぼ毎年、郡山駅から西の市街地でゲリラ豪雨による家屋などの浸水被害が起きている。郡山市では、総合的な治水対策として行政・流域自治体からなる「郡山市総合治水対策連絡協議会」で検討し、関係機関が対策を実施することとなった。2014(平成26)年、「郡山市ゲリラ豪雨対策9年プラン」を策定し、2022(令和4)年をめどに2010(平成22)年の74㎜の記録的豪雨を上回る雨量にも耐えられる市街地整備に着手した。プランに沿い、市は雨水を一時的に保管して一気に流れて内水氾濫が起こらないよう調整する雨水貯留施設を市内5ヵ所に設置する工事を行った。これにより、計約3万8,300トンの雨水を地下にためられるようになる。また、市は、2019(令和元)年6月、麓山の21世紀記念公園地下に整備した「麓山調整池」の一部で使用を開始した。25mプール約7.3杯分に当たる約2,200tの雨水をためられる。1時間に35㎜の局地的豪雨のあった2019(令和元)年5月には、調整池そばの交差点で大人の膝ほどの水がたまり、道路が冠水したが、使用開始後は同量の雨量を観測しても同じ地点に水はたまらず、効果が表れた。また、駅南西側では阿武隈川につながる雨水幹線を2016(平成28)年に整備し、ポンプ場のポンプを3基から5基に増設した。周辺の堤下町などの浸水を軽減する効果が出ているが、50㎜以上の降雨量では浸水の危険が拭えない。そのため、2020(令和2)年現在、約6,700tの雨水をためられる「図景貯留管」の工事が進められている(『福島民友』2020年7月6日)。