地域のシンボル的な存在である学校に着目すると、少子化により小中学校の統廃合が行われ、2005(平成17)年以降に15校、そのうちこの10年間には9校が廃校施設となった。2018(平成30)年に郡山市立西田学園が開校すると、西田町の高野小学校、鬼生田小学校、三町目小学校、大田小学校、根木屋小学校の5校、2019(平成31)年には、3年間の休校を経て熱海町の上伊豆島小学校、2020(令和2)年には、田村町の栃山神小学校、二瀬中学校、田母神小学校の3校が廃校施設となった。15校の廃校施設のうち、9校(契約済みも含む)が活用され、うち4校は行政備品保管庫(旧河内小学校夏出分校)、考古資料保管庫(旧福良小学校)、教職員研修やICT教育の拠点となる教育委員会施設(旧三町目小学校)、2019(令和元)年10月から東日本台風の災害物資保管庫(旧高野小学校)、として使用されている。学校としての役目を終えたこれらの廃校施設は、長く地域に親しまれてきた場所であり、地域生活の拠り所でもあることから、郡山市は地域コミュニティの維持や活性化、産業振興などの目的で有効活用を図っている(郡山市(2023)『廃校アルバム』)。
5校の廃校施設は民間事業者に売却または賃貸借契約により活用され、また今後活用すべき契約がなされている。旧大田小学校では、株式会社ウェブレッジと賃貸借契約を結び、学校向けICT教育サービスのプレ実証実験の場を目的に、学校現場と同じ環境で検証する場所として使用されている。新型コロナの影響で、交流スペースとしての開放を見送っているが、検証時に使用する携帯電話機器が展示されている図書室では、事業者とのワークショップを開催するなど、廃校施設の持つ魅力を活かしたオフィス環境が整備されている。旧上伊豆島小学校では、施設の売却を受けた株式会社エフコムが自社オフィス機能に加え、地域への支援活動場所の提供や旧上伊豆島小学校の資料展示を行い、地域交流の場として地域住民とともに活用方法を話し合いながら進めていく計画である(郡山市(2022)「特集1 知ってる?廃校の今」『広報こおりやま』2022年12月号・第751号)。