1 ユニバーサルデザインの変遷とその進展

 ユニバーサルデザインとは、年齢や性別、身体的能力、国籍や文化など人々の様々な違いに限定されることなく、すべてのヒトに配慮したまちづくり、モノづくり、しくみづくりを行うことを理念としている。この考え方は、米国・ノースカロライナ州立大学教授のロナルド・メイス氏(Ronald L. Mace,1941-1998)によって提唱されたことが知られている。同氏は、自身も身体にハンディを持った建築家であったが、建築やデザインなどの分野から新たな息吹を与えてくれた。

 その後、同氏が提唱したユニバーサルデザインは、欧米よりも日本国内においてバリアフリーを進化させる概念として定着して、広範な領域に展開されている。

 日本政府は、国民一人ひとりが自立して互いに支え合う共生社会の実現を目指して、「バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進要綱」を、2008(平成20)年3月28日の関係閣僚会議において決定した。それから10年後、全ての国民が、障がいの有無、年齢等にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念に基づき、障がい者、高齢者の自立した日常生活及び社会生活が確保されるユニバーサル社会の実現を目的として「ユニバーサル社会の実現に向けた諸施策の総合的かつ一体的な推進に関する法律」(内閣府『内閣府公式ホームページ』2018(平成30)年法律第100号:<https://www8.cao.go.jp/souki/barrierfree/pdf/kaigi/universal_hou.pdf>参照2023年7月10日)が制定された。郡山市は、ユニバ―サルデザイン推進に向けて行ってきた従前の指針の活動実績等を踏まえて、2018(平成30)年3月「第二次こおりやまユニバーサル推進指針」(郡山市『郡山公式ホームページ』<https://www.city.koriyama.lg.jp/uploaded/attachment/20043.pdf>参照2023年8月10日)を策定した。

 この指針は、「誰もが暮らしやすいユニバーサルデザインのまち」を基本目標として、行政のみならず、市民、事業者、NPO法人、市民活動団体等が、共通認識を持った上で、お互いを尊重して、協働によるユニバーサルデザインのまちづくりに取り組むためのものである。本市に係るユニバーサルデザインの推進は、学識経験者、高齢者、障がい者団体等の代表などの委員15名で構成された「こおりやまユニバーサルデザイン推進協議会」において継続的に協議が行われている。


第二次こおりやまUD推進指針 表紙

 本指針は、2018(平成30)年度を初年度として、「郡山市まちづくり基本指針」との整合性を図りながら2025(令和7)年度までの8年間を計画期間とした。その後、当該期間の前半4年間は、大きな社会情勢の変化(SDGsの推進、気候変動と自然災害への対応、新型コロナウイルス感染症への対応、DX(デジタルトランスフォーメーション)など)があり、本市が推進する各分野の施策の改善や強化が図られることになった。特に、SDGsは、2015(平成27)年9月の国連サミットにおいて、「誰一人取り残されない」という基本理念のもとに、すべての国が関わって2030(令和12)年までに達成すべき 17 の目標を設定したSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)が、全会一致で採択されたものである。郡山市では、将来世代に繋ぐ持続可能なまちづくりのためにSDGsの推進に取り組むことを掲げて、2019(令和元)年7月に内閣府から先導的にSDGsに取り組む自治体として「SDGs未来都市」に選定されて、東北初の「自治体SDGsモデル事業」にも選ばれた。 

 その結果、SDGsの基本理念は、本市の最上位計画である「郡山市まちづくり基本指針」に副った政策推進の重点的な骨子となり、2019年(令和元)年8月に「郡山市SDGs未来都市計画」が策定された。本市におけるSDGsの政策は、バックキャスト(注1)の視座から継続して当該施策が推進されることとなった。

 これらの市政の変化を踏まえて、第二次こおりやまユニバーサルデザイン推進指針(2018(平成30)年度~2025(令和7)年度)は、前期4年間(2018(平成30)年度~2021(令和3)年度)の施策や事業等の実績について2021(令和3)年度に時点修正等の見直しが行われて、後期4年間のさらなる推進に向けて一部改訂された。その内容は、従前の指針を土台に、あるべき郡山市の将来像《基本目標》を実現するために、「誰一人取り残されない」とするSDGsの基本理念と連携させ、ユニバーサルデザインの3つの基本方針と重点的に取り組む8つの基本施策(郡山市市民部市民・NPO活動推進課『第二次こおりやまユニバーサルデザイン推進指針』(後期(2022年度~2025年度)別冊:Ⅲ指針 第5章一部改訂、20-21頁、2018年策定・2022年3月一部見直し)を見直したものである。


注1. 未来に目標とする状況等を予測して、その実現に向け現在に立ち返って思考すること