(3) 子どもの健康課題「体力低下」“日本一元気な郡山の子”を目指して

 原発事故後、屋外での活動を自粛していた子どもたちの運動習慣は、事故前の水準に戻るには困難を極めた。『郡山市子どもの心と体の育ち見守り事業』調査報告書(2013(平成25)年、郡山市内の4歳から15歳、3万2,275人対象)によると、学校の体育時間を除いて1週間に全く運動をしない子どもは、男子全体で23%、女子全体で26.1%であった。

 一方、中学生においては、1週間の総運動時間が男女ともに「1,000分」程度という生徒も多く、東日本大震災後、「積極的に運動する子どもとしない子」の二極化が進んでいることが指摘された。

 2012(平成24)年の小・中学生の「長座体前屈」や「立ち幅跳び」「ボール投げ」の記録が、前年度より下回り全体的に低下傾向であったこと、福島県内の児童生徒の肥満傾向が懸念されたため、郡山市は体力向上推進構想「日本一元気な郡山の子」を策定し、2013(平成25)年から「体づくり」「健康づくり」「生活習慣づくり」を3本柱にして総合的な体力向上をめざした。

 この取り組みは、年度・種目により記録の上下はあるものの着実に成果が上がっているという評価が得られたが、新型コロナウイルス感染症の感染防止策として実施された臨時休業中の外出制限等が、再度子どもたちに影響を与えることになった。

 2010(平成22)年度と2021(令和3)年度の中学3年生の種目別記録(平均値)を表2・3に示す。男子が5種目、女子が4種目で震災前の記録を上回った。

表2 2010(平成22)年度と2021(令和3)年度の種目別記録(平均値):郡山市の男子中学3年生の場合
年度 握力
(kg)
上体起こし
(回)
長座体前屈
(cm)
反復横とび
(点)
50m走
(秒)
1500m走
(秒)
立ち幅とび
(cm)
ハンドボール投げ
(m)
2010(平成22)年 35.82 29.38 45.36 54.20 7.67 376.59 207.40 23.68
2021(令和3)年 34.59 28.12 48.02 55.65 7.56 383.00 211.08 24.94
出典:『令和4年度 郡山市立学校 児童生徒の体力・運動能力、発育の現状』 2頁、11頁 郡山市教育委員会

表3 2010(平成22)年度と2021(令和3)年度の種目別記録(平均値):郡山市の女子中学3年生の場合
年度 握力
(kg)
上体起こし
(回)
長座体前屈
(cm)
反復横とび
(点)
50m走
(秒)
1500m走
(秒)
立ち幅とび
(cm)
ハンドボール投げ
(m)
2010(平成22)年 25.88 23.60 45.66 46.41 8.82 287.65 168.04 14.60
2021(令和3)年 25.36 23.55 48.14 47.75 8.73 291.00 171.17 14.14
出典:『令和4年度 郡山市立学校 児童生徒の体力・運動能力、発育の現状』 2頁、13頁 郡山市教育委員会