(3) 感染防止への対応

a 発熱外来診療所の設置

 星総合病院は、2020(令和2)年4月27日に病院敷地内の立体駐車場に発熱外来を独自に開設した。利用者は、同病院を利用している患者や近隣医療機関の紹介を受けた患者を対象とし、予約制で診療にあたった。受診者は駐車場で診察まで車内で待機し、医師や看護師は完全防備で対応し、受診者との接触を最少限にして感染リスクを低減させた。

 市は2020(令和2)年5月7日に、発熱者を対象にした発熱外来診療所を南東北第二病院の1、2階に開設した。3、4階の既存の病棟と出入口を分け、発熱者と入院患者の接触を回避した。民間病院に感染症専用の外来が設置されたのは県内初で全国的にも例がないという。発熱外来を受診するには帰国者・接触者相談センターに電話で相談の上受診する流れとした。高校生以上を対象に、郡山医師会の医師らが交代で診療にあたった。受診時は、医師と受診者の直接接触を避けるため携帯端末を通してやり取りをした。市は、2020(令和2)年10月1日に、市内2ヵ所目となる市発熱外来診療所を星総合病院敷地内に設置し診察を開始した。

 市は感染症の感染拡大を防止するとともに初期救急医療体制の確保のため、2020(令和2)年10月1日から、休日・夜間急病センターの外に、発熱者の診療を行う仮設診察室(プレハブ)を設置し、非接触診療により発熱患者に対応した。郡山市医師会の会員が当番で担当した。


b 「PCRセンター」の設置

 市は、2020(令和2)年10月1日に南東北第二病院と星総合病院に「PCRセンター」を設置した。郡山市にPCRセンターが2ヵ所になったことで、1日当たりの検査件数がこれまでの3倍の約260件まで可能となった。また、「PCRセンター」には、PCR検査設備のない医療機関の医師が検査を依頼することができるようになり、受診から検査までの流れが円滑に進むようになった。


c ワクチン接種

 厚生労働省は、2020(令和2)年12月3日に、国内初のコロナウイルス感染症のワクチンとして米国ファイザー社製のワクチンを採用することを承認した。

 郡山市は、2021(令和3)年1月12日に、ワクチン接種を円滑に行うためのプロジェクトチームを設置し、同年3月4日から感染症患者に対応する医師や看護師等を優先して最初にワクチン接種を始めた。医療者が安心して医療に専念できる大きな一歩となった。

 同年4月12日からは、県内市町村のトップを切って、郡山市内の高齢者(9万377人)のワクチン接種を開始した。

 65歳未満で基礎疾患のある人(約2万7,000人)には、6月下旬から接種券を発送し、65歳未満の市民(約15万人)には、7月下旬から高年齢順に接種券を発送し接種を始めた。

 保育施設の職員(保育士や幼稚園の教諭ら約3,000人)と小中学校の教諭ら(約2,500人)は、学校が夏季休暇となる7月中旬以降に優先的に接種を開始し、ほとんどの職員が8月末までに接種を終えた。

 大規模接種会場(東京、大阪等)で接種を希望する県外在住の郡山市民には、7月中に接種券の発送を完了した。

 市内の企業や大学ではワクチンの職場・職域接種計画を進めていたが、打ち手不足が課題となった。福島県看護協会は、潜在看護師にワクチン接種方法などの研修を行い打ち手不足の解消に努めた。市は2021(令和3)年7月1日から市独自に中小企業のワクチン職域接種の支援を始め、7月1日から郡山女子大学で学生や教職員ら約1,000人に、7月3日からはヨークベニマル(子会社のライフフーズを含む計24店舗)の従業員約3,000人に星総合病院で接種を開始した。

 市は7月以降の感染者の急増(第5波)を受け、9月13日から、妊娠後期の人とその配偶者(またはパートナー)を対象にワクチンの優先接種を行った。

 ワクチン接種が進むにつれ、県内の感染者に占める60歳以上の人の割合は、3月の34.7%から7月には10.3%に減少し、県は「ワクチンによる一定の効果が出ている」(『読売新聞』2021年7月14日)と評価した。

 国は、新たな変異株「オミクロン」への対応を強化するため、ワクチンの3回目接種を2~1ヵ月短縮すると発表した。市は2021(令和3)年12月1日から医療従事者に、3回目のワクチン接種を実施した。