4 生活福祉資金貸付制度について

 「生活福祉資金貸付制度」は、低所得者や高齢者、障害者の生活を経済的に支えるとともに、その在宅福祉および社会参加の促進を図ることを目的とした貸付制度である。近年では生活困窮者自立支援制度の各事業との連携をすすめ効果的、効率的な支援を実施することで、生活困窮者の自立の促進を図ることが求められている。国の制度要綱により行われているが、実施主体は各県の社会福祉協議会であり、郡山市では郡山市社会福祉協議会が窓口となって運用されている。貸付の種類は「総合支援資金」「福祉資金」「教育支援資金」「不動産担保支援資金」があり、さらに「生活復興支援貸付金」という東日本大震災により被災した低所得世帯を対象とした貸付も新に実施されているが、郡山市ではこの貸付資金の貸付実績は無い。さて郡山市における生活福祉資金等貸付事業の実績をみると2012(平成24)年度からの状況では、当初申込件数137件のうち半数近く(60件)は福祉資金の緊急小口資金となっている(表4)。


表4 生活福祉資金等貸付事業等の実績
(表4:郡山市社会福祉協議会「生活福祉資金貸付等事業の実績」)

 緊急小口資金は「緊急かつ一時的に生計の維持が困難となった場合に貸し付ける少額の費用」となっており10万円以内の貸付額となっている。貸付の件数では2012(平成24)年が60件と最も多くなっているが、これ以降は50件から60件前後での推移をしている。また、貸付額からみると同様に2012(平成24)年がピークで総額では約4,600万円の貸付を行っており、これ以降は2,000万円から3,000万円前後で推移をしている。10年間を俯瞰してみると継続して貸付がされているのは福祉資金のうち「福祉費」(低所得世帯、障害者世帯又は高齢者世帯(日常生活上療養又は介護を要する高齢者世帯に限る。)に対し、貸付ける資金)と「教育支援資金」(低所得世帯に対し、就学等に必要な経費として貸付ける資金)となっている。

 また、特筆すべきは2020(令和2)年、2021(令和3)年の新型コロナ感染症の特例給付である。これは新型コロナウイルス感染症の影響により休業や失業等による収入の減少で緊急かつ一時的な生計維持のための貸付を必要とする世帯を対象とした貸付である。特に従来の低所得世帯等に限定した取扱を拡大して、新型コロナ感染症の影響で収入の減少があれば貸付が可能なものとなっている。2020(令和2)年では申込件数が3,846件、貸付金額13億6,338万9,000円、2021(令和3)年では申込件数3,092件で貸付金額12億6,857万円と非常に大きな金額となっている。2020(令和2)年から世界規模で起こった新型感染症の拡大とそれにともなう緊急事態宣言が郡山市民の暮らしに与えた影響を物語っている。一方、今後の課題は貸付後の償還(一部免除や減免などもあるが)の時期に入ってくることである。新型コロナウイルス感染症の収束後の新たな課題となってくる可能性も少なくない。