(1) 水害・風害・雪害等の災害

a 災害の発生状況

 2012(平成24)年から2021(令和3)年までの10年間における、主な自然災害の発生状況を表1と表2に示す。表1は市の事務報告書記載の災害対策活動における水害と風害、雪害及び福島県の被害状況速報に記載の警報が発令された主な災害の発生日とその概要を示す。

 表1中の降水量と最大瞬間風速のデータは気象庁郡山(福島)観測所(郡山市安積町成山)の値を記載している。特に集中豪雨や突風は局地性が強いために、郡山市全域に警報、注意報が発令されていても、観測点における雨量や風速がゼロの場合がある点に注意を要する。また、観測所の瞬間最大風速10m/秒以下のものは記載していない。(『気象庁ホームページ』「各種データ・資料/過去の気象データ検索」)

 災害の発生状況は以前の10年間(2002(平成14)年から2011(平成23)年)に比べて、警報の発令回数が増加している。特に、2019(平成31/令和元)年からは警報の発令回数が多くなっている。2021(令和3)年は大きな災害発生はないものの、7月7日から8月13日の間、低気圧による大雨警報や洪水警報が15回も発令されている。被害と風速や降雨などの関係を見ると、風害では瞬間最大風速20m/秒以上で倒木や住宅等の一部損壊などの被害が生じている。水害では時間降水量30mmに達すると、住家の浸水や店舗等の非住家浸水、道路被害が発生している。さらに、総降水量が70mm以上では、床上浸水やその他の被害が発生している。また、表中の道路被害には一部に路肩の損傷などを含むがその多くは道路冠水による被害である。

表1 主な自然災害
月 日 災害
種別
要 因 警報 総降水量
(ミリメートル)
時間最大
降水量
(ミリメートル)
瞬間最大
風速
メートル/秒
被害状況
2012年
(平成24年)
4月3日 風水害 局地的豪雨 41.5 30.0 21.3 一部損壊10件、道路被害4件、土砂崩れ4件、倒木35件
5月3日 水害 低気圧 大雨・洪水 90.5 12.0 11.4 一部損壊1件、床下浸水2件、非住家被害1件、道路被害8件、土砂崩れ4件
6月19日~
6月20日
水害 低気圧 77.5 16.0 11.8 床下浸水7件、道路被害12件、土砂崩れ26件、倒木3件
7月6日~
7月7日
水害 低気圧 65.5 22.6 非住家1件、土砂崩れ2件
8月11日 水害 局地的豪雨 大雨・洪水 38.0 25.0 浸水(床上6件、床下8件、店舗2件)、道路被害4件(島、亀田、桑野、外)
9月30日~
10月1日
風水害 低気圧 大雨・洪水
暴風
44.0 20.0 14.6 道路冠水3件、倒木1件、東北新幹線、磐越東線、磐越西線、水郡線、一時運転見合わせ
3月10日 風害 低気圧 暴風 23.6 東北本線16本運休、磐越西線6本運休、一部損壊5件、非住家被害3件、倒木3件
2013年
(平成25年)
4月8日 風害 低気圧 暴風・大雨 0.5 0.5 26.1 東北新幹線、磐越西線一時運転見合わせ、国道49号磐梯熱海大橋トラック等の横転事故通行止め、熱海町地内4戸停電、一部損壊20件、床下浸水1件、非住家被害28件、倒木9件 
6月25日 水害 局地的豪雨 大雨・洪水 107.0 101.0 浸水(床上7件、床下53件、非住家8件)、法面崩壊3件、道路被害59件(富久山、長者、亀田、並木、本町、開成、日和田、外)、停電(石渕町、横塚406戸、水門町47戸)
7月22日~
7月23日
水害 梅雨前線 大雨・洪水 146.0 35.0 浸水(床上7件、床下46件、非住家19件)、道路被害185件、土砂崩れ21件、河川越水・溢水2件、集落孤立(熱海町安子島地内程沢橋、落橋により上流部5世帯孤立)
7月26日 水害 低気圧 27.0 19.0 床下浸水4件、道路被害17件
7月27日 水害 低気圧 大雨・洪水 27.0 18.5 床下浸水2件、非住家被害2件、道路被害17件
8月5日 水害 低気圧 大雨・洪水 11.0 10.0 床下浸水8件、非住家被害3件、道路被害29件、磐越西線、磐越東線一時運転見合わせ
9月15日~
9月16日
風水害 台風18号 大雨・洪水
暴風
80.0 23.5 21.9 床下浸水1件、非住家被害2件、道路被害24件、水郡線、磐越東線運転見合わせ
10月15日~
10月16日
風水害 台風26号 大雨・洪水
暴風
107.0 13.5 23.6 非住家被害2件、道路被害12件、倒木5件、新幹線41本運休
12月10日 風害 低気圧 24.6 道路被害2件、倒木2件
12月16日 風害 低気圧 暴風 27.2 倒木3件
2014年
(平成26年)
2月8日~
2月9日
雪害 低気圧 大雪 9.0 2.0 16.8 人的被害2件
2月15日 雪害 低気圧 大雪・暴風 12.5 3.0 20.9 人的被害28件、一部損壊1件、道路被害20件、東北本線、磐越西線、磐越東線、水郡線一時運転見合わせ
7月9日~
7月10日
水害 台風8号、 前線 大雨 94.5 10.5 13.5 台風8号接近により小中高校休校、水門確認の1名死亡、道路被害18件
10月6日 水害 台風18号 大雨 62.5 14.0 20.3 道路被害4件、水郡線、東北線、磐越東線一時運転見合わせ
10月13日~
10月14日
水害 台風19号 大雨・洪水 77.0 18.5 17.3 床下浸水3件、磐越東線、磐越西線一時運転見合わせ
2015年
(平成27年)
7月16日 水害 低気圧 大雨 74.0 18.5 磐越東線、磐越西線、東北本線一時運転見合わせ
8月11日 水害 局地的豪雨 55.0 8.5 浸水(床下6件、非住家6件)、道路損壊1件、道路被害26件(島、亀田、若葉、堂前、外)
9月9日~
9月10日
水害 台風18号、
前線
大雨・洪水
土砂災害
40.0 8.5 床下浸水1件、道路被害1件、福島交通郡山~若松間一部運休
2016年
(平成28年)
1月18日 雪害 低気圧 大雪 27.5 3.0 東北本線、磐越西線一部運休
1月25日 雪害 低気圧 大雪 35.5 3.5 大雪警報(湖南町)
4月17日 風害 低気圧 21.2 倒木3件
8月2日 水害 大気圧 大雨・洪水
土砂災害
52.5 30.0 15.0 東北本線、磐越西線、磐越東線一部運転見合わせ
8月17日 水害 台風7号 大雨・土砂 114.5 10.5 15.0 土砂崩れ5件、倒木2件、東北本線、磐越西線、磐越東線、水郡線一部運休
8月22日 水害 台風9号 大雨・洪水 33.5 10.5 東北本線、磐越西線、磐越東線、水郡線一部運休、市道(三穂田町、富久山町) 倒木2件、市道(大槻町)道路4cm程度冠水
2017年
(平成29年)
4月19日 風害 低気圧 暴風 28.5 熱海、喜久田800戸停電、住宅被害5件、倒木23件、東北本線一部運転見合わせ
7月25日 水害 局地的豪雨 47.5 磐越西線、水郡線ダイヤ乱れ
8月6日 水害 局地的豪雨 大雨・洪水 10.0 浸水(床下6件)、(麓山、鶴見坦、亀田、外)
10月22日 水害 台風21号 大雨・洪水
暴風
146.0 35.0 浸水(床上1件、非住家4件)、道路被害4件、土砂崩れ36件、倒木21件、避難所開設52施設、最大避難者495人、(阿武隈川沿岸(郡山中央工業団地周辺)、富久山)、東北本線、磐越東線、水郡線、運転見合わせ、高速バス(福島交通、新常磐交通、会津乗合自動車)一部運休
10月30日 風害 低気圧 暴風 27.7 一部損壊1件、非住家被害2件、倒木8件
12月25日 風害 低気圧 暴風 29.1 一部損壊2件、非住家被害2件、倒木3件
2018年
(平成30年)
1月22日 雪害 低気圧 大雪 15.5 4.0
3月1日 風害 低気圧 暴風 24.8 人的被害1件、一部損壊2件、倒木1件
7月10日 水害 低気圧 大雨・洪水 45.0 39.5 東北本線、磐越西線、磐越東線、水郡線一時運転見合わせ、床下浸水2件、倒木2件、道路被害34件
8月8日 風害 台風13号 暴風 15.8
8月10日 水害 低気圧 大雨・洪水 20.5 12.0 湖南に土砂災害警報
9月4日 風害 台風21号 暴風 20.1 一部損壊2件、非住家被害1件、倒木24件
9月30日~
10月1日
風水害 台風24号 大雨・降水
暴風
44.0 8.5 20.2 高速バス一部運休
2019年
(平成31年、 令和元年)
3月11日 風害 低気圧 暴風 22.5 4.5 17.2
5月15日 水害 局地的豪雨 大雨・洪水 49.0 39.0 10.6 浸水(床上1件、床下14件、非住家3件)、道路被害6件、荒井町約20戸停電、東北本線、磐越西線、磐越東線、水郡線一部運休
5月21日 水害 低気圧 大雨・洪水 45.0 12.0 13.8
7月24日 水害 低気圧 大雨・洪水 34.5 21.5 湖南にのみ大雨・洪水警報、東北本線一時運転見合わせ、磐越東線遅れ
7月28日 水害 低気圧 洪水 39.5 30.0 東北本線、水郡線一時運転見合わせ
8月6日 水害 低気圧 大雨 0.0 0.0 11.9
8月7日 水害 低気圧 大雨・洪水 0.0 0.0
8月13日 水害 低気圧 大雨・洪水 0.0 0.0 10.1
9月9日 風害 台風15号 暴風警報 52.0 15.0 11.5 一部損壊1件、東北本線、磐越西線、磐越東線、水郡線一部運休
10月12日~
10月13日
水害 台風19号
(東日本台風)
大雨・洪水
土砂・暴風
281.5 36.5 25.1 死者6名、負傷者1名、浸水(6,763件、床下907件、その他1,094件)、市道被害288件、市管理河川被害113件、避難所開設42カ所、最大避難者3,973人、阿武隈川沿川(郡山中央工業団地、水門町、安積町、田村町、富久山町、外)、阿武隈川越水6箇所・溢水1箇所、谷田川決壊2箇所、藤田川決壊2箇所、逢瀬川越水、笹原川越水、中央工業団地周辺、逢瀬川沿線、阿武隈川沿線において浸水多数、借り上げ住宅等への入居376世帯、全壊649件、半壊4,212件、一部損壊2,870件 
10月25日 水害 低気圧 洪水 45.0 12.0 19.4
2020年
(令和2年)
4月18日 水害 低気圧 洪水 47.5 14.0 17.9
5月23日 水害 低気圧 大雨・洪水 75.5 54.0 床下浸水7件
7月8日 水害 低気圧 大雨・洪水 39.0 15.5 倒木1件、磐越東線、水郡線一部遅延
7月11日 水害 低気圧 洪水 15.0 9.0
7月21日 水害 低気圧 大雨・洪水 17.5 13.0
7月28日 水害 低気圧 大雨・洪水 73.0 17.5 12.3 倒木1件
8月2日 水害 局所的豪雨 大雨・洪水 0.0 0.0
8月5日 水害 局所的豪雨 大雨・洪水 0.0 0.0
8月22日 水害 局地的豪雨 大雨・洪水 24.0 11.0 11.7 200戸停電、倒木1件
8月23日 水害 局地的豪雨 洪水 0.0 0.0
8月29日 水害 局地的豪雨 洪水 0.0 0.0
9月11日 水害 局地的豪雨 大雨・洪水 5.5 3.0 中田町道路冠水、倒木4件、東北本線、水郡線一部遅延
2021年
(令和3年)
2月15日 風害 暴風 暴風 32.0 9.5 25.2
6月13日 水害 低気圧 大雨・洪水 36.0 18.0 床下浸水1件
6月14日 水害 低気圧 大雨・洪水 0.0 0.0
6月15日 水害 低気圧 大雨・洪水
土砂
0.0 0.0
6月16日 水害 低気圧 大雨・洪水
土砂
7.5 7.0 床下浸水1件
6月23日 水害 低気圧 大雨 30.5 10.5
6月24日 水害 低気圧 洪水 19.0 8.5
7月7日 水害 低気圧 大雨・洪水 30.5 10.5
7月9日 水害 低気圧 大雨・洪水 17.5 5.5
7月11日 水害 低気圧 大雨 13.5 5.0
7月13日 水害 低気圧 洪水 18.5 13.5
7月20日 水害 低気圧 大雨・洪水
土砂
0.0 0.0
7月22日 水害 低気圧 大雨・洪水 12.5 12.5 11.9
7月23日 水害 低気圧 大雨 記録なし - - 水郡線一時運転見合わせ
7月24日 水害 低気圧 大雨 0.0 0.0
7月27日 水害 台風8号 大雨 12.0 4.5 11.9
7月28日 水害 低気圧 大雨・洪水
土砂
19.5 11.0 床下浸水5件(黒石川溢水)
7月29日 水害 低気圧 大雨・土砂 5.5 5.0 12.0
7月30日 水害 低気圧 大雨 0.0 0.0
8月1日 水害 低気圧 大雨・土砂 15.5 15.0 15.0
8月4日 水害 低気圧 大雨・洪水 5.0 4.0 12.2
8月13日 水害 低気圧 大雨・土砂 57.5 12.0
8月22日 水害 低気圧 大雨 2.5 1.5 一部損壊1件、東北本線、磐越西線、磐越東線、水郡線一時運転見合わせ
10月3日 水害 低気圧 大雨 24.5 14.0 大雨警報
(郡山市『郡山市事務報告書』2012(平成24)年度から2021(令和3年度))、(福島県『福島県ホームページ』「危機管理課/被災状況即報」<http://bosai.pref.fukushima.jp/saigaig/damage_newsfl_list.html>)

 主な災害について示す。2013(平成25)年には4月8日の暴風により東北新幹線、磐越西線は一時運転見合わせ、国道49号磐梯熱海大橋ではトラック等の横転事故で通行止めとなり、熱海町地内4戸停電、倒木9件および一部損壊20件、非住家被害28件などの被害となった。6月25日には時間最大降水量101mmの局地的豪雨により、浸水(床上7件、床下53件、非住家8件)、法面崩壊3件、道路被害59件(富久山、長者、亀田、並木、本町、開成、日和田、外)、停電(石渕町、横塚406戸、水門町47戸)が発生した。さらに、7月22日から23日は梅雨前線による総降水量146mm、時間降水量35mmにより、浸水(床上7件、床下46件、非住家19件)、道路被害185件、河川越水・溢水2件、集落孤立(熱海町安子島地内程沢橋、落橋により上流部5世帯孤立)の被害が発生した。

 2017(平成29)年10月22日には台風21号により、総降水量146mm、時間最大降水量35mmの降雨があり、浸水(床上1件、非住家4件)、道路被害4件、土砂崩れ36件、倒木21件の被害があり、避難所開設52施設、最大避難者495人が避難した。

 2019(令和元)年10月12日から10月13日にかけての台風19号は令和元年東日本台風と呼称され、郡山市では総降水量281.5mm、時間最大降水量36.5mm、瞬間最大風速25.1m/秒となり、阿武隈川沿川の須賀川市、郡山市、本宮市、二本松市、福島市及び浜通りの多くの市町村では、甚大な洪水災害に見舞われた。その詳細は次項で詳述する。


b 令和元年東日本台風災害とその後の復旧状況

 【被害の概要】

 2019(令和元)年10月12日から13日にかけて本県に来襲した台風19号(東日本台風)の災害とその後の復旧状況を示す。総降水量は白河373mm、須賀川(長沼)287.5mm、郡山195.5mm、福島252mmで、阿武隈川上流の流域平均2日雨量は250.9mmとなった。この降雨により阿武隈川の計画洪水位(計画最高水位)を須賀川では162cm、郡山では133cm、本宮では44cm超過する洪水となった。阿武隈川における計画洪水位から堤防天端までの余盛(余裕高さ)は150cmであるので、須賀川流量観測所では堤防を12cm上回る水位となり、4ヵ所で堤防を越水した。郡山流量観測所では堤防天端まで17cmほど余裕はあったが、谷田川における2ヵ所の破堤と御代田下流の永徳橋付近の無堤区間からの溢水により、郡山中央工業団地及び周辺域は昭和61年8.5水害以来の2度目の大規模浸水となった。また、笹原川では4ヵ所、逢瀬川は2ヵ所、藤田川も2ヵ所の越水があり、さらに、大滝根川合流点下流から藤田川合流点の間の本川において3ヵ所が越水し、郡山市の浸水区域の面積は14.37平方キロメートルにおよぶ甚大な洪水被害となった。(国土交通省東北地方整備局福島河川国道事務所『福島河川国道事務所ホームページ』「令和元年東日本台風阿武隈川上流水害写真集/1章洪水の記録」)

 2020(令和2)年12月時点での被害を総括する。人的被害は死者6名、負傷者1名、住家被害は全壊649件、大規模半壊989件、半壊3,223件、一部損壊2,870件である。非住家被害は全壊244件、大規模半壊342件、半壊1,225件、一部損壊197件である。農業被害の合計は24億5,759万円、商工業関係の被害は郡山工業団地、郡山食品団地、郡山商工会議所、郡山地区商工会広域協議会を合わせて、被災事業者数532件、総額625億6,200万円におよぶ。公共施設の浸水被害は安積行政センター、永盛小学校、小泉小学校、赤木小学校、永盛保育所などで、業務の一時停止及び休校となった。その他、公民館、体育館、スポーツ広場等の浸水被害は多施設におよぶ。また、衛生施設では富久山クリーンセンター、衛生処理センター、リサイクルプラザに加えて下水処理施設の下水道管理センター、梅田ポンプ場、水門町ポンプ場、行合橋中越ポンプ場、水門町真空ステーション、市内各所のマンホールやポンプ場が浸水した。これらの施設は復旧までに多くの時間を要した。なお、浸水した小学校では仮校舎での授業を余儀なくされた。その後、小泉小学校は2020(令和2)年10月より本校で授業を再開した。また、赤木小学校、永盛小学校は12月より一部授業を再開し、2021年3月に完全復旧している。

 【災害対応の検証】

 市では令和元年東日本台風における災害対応検証を2020(令和2)年12月に公表している。(郡山市(令和2年12月)『令和元年東日本台風における災害対応検証』p.123)

 この検証をまとめるにあたり、関係団体・町内会との意見交換会(自主防災連絡協議会、セーフコミュニティ推進連絡協議会、町内会長と市長との懇談会、郡山女性グループ連絡会と市長との懇談会、民生委員協議会と市長との懇談会)を実施した。さらに、台風被害があった地区から無作為抽出した2,033人に対して、被災者アンケート調査を実施し、1,031件(回答率50.7%)の回答をまとめ、課題を抽出した。さらに、庁内において、災害対応検証ワーキングクループによる5つの視点からの検証を行っており、全体を取りまとめている。検証の要約を以下に示す。


<被災者アンケート>

 被災者アンケートからは、避難行動の状況及び理由の項目(回答数n=1,031人)において、避難所等への水平避難をした人は56.7%であった。そのうち、親戚・知人宅へが32.9%で最も多く、次いで市の指定避難所は12.8%、安全と思う建物、施設等が8.2%、市の指定以外の避難所2.85%であった。また、自宅の2階以上への垂直避難は16.8%であった。避難しなかったは21.1%、避難しようと思ったが避難できなかったも3.4%あった。

 避難しなかった理由(n=217人)では、状況を判断して安全とした44.7%、これまでの経験で被害に会うとは思わなかった42.4%、いざとなれば2階に避難すればよいと思った30.4%、避難する方が危険であると思った17.5%と続く。

 避難場所の選択では、近くて一番安全な場所だから33.1%、車で行きやすい、止めやすい場所であるが29.6%、市が指定した避難所だから17.1%、日ごろから安全な場所、建物、施設と思っていた13.7%である。これらのことから、避難所を事前に確認しており、駐車スぺースがある避難箇所を選択している。

 避難の移動手段(n=585人)では、自家用車の回答が89.4%と最も多く、徒歩は5.1%と少ない。このことから、降雨ピークが夜間であること、家族で移動できる、車の水没回避、個人空間の確保などの理由から、車による避難が多いことが伺える。

 要配慮者の避難(n=113人)については、家族との避難が66.4%、同居以外の家族や親戚が19.5%であった。それ以外では消防6.2%、町内会・自主防災組織3.5%、自衛隊3.5%、消防団2.6%、市職員など1.8%となる。

 避難所で1泊以上避難した人からの避難所の改善が必要と感じたこと(n=158人)では、避難所の食事50.0%、プライバシーの保護33.5%、暖房関係32.3%、情報取得手段31.0%、援助物資の不足29.8%、衛生面25.3%、生活場所としての避難所14%、防犯・防火対策8.2%とつづく。


<関係団体・町内会との意見交換>

 関係団体・町内会との意見交換では、郡山市自主防災連絡役員会からは水没する避難所においても垂直避難に対応できる命を守る緊急避難場所としての指定が必要であるとし、その後、日本大学工学部や帝京安積高等学校を含めて4校と協定を締結した。また当日、要配慮者の把握ができていない地区もあり、災害時の避難体制に不安が残ることについては、郡山市避難行動要支援者避難支援制度を改定し、市域包括支援センター、社会福祉協議会を追加し援助を充実することとした。平時からの避難所の周知や各団体の協力体制の構築においては、災害時は行政センターが活動の中心となるので、災害時に備えた団体の連携方法を検討することとした。

 避難に際しては、避難したが床上浸水で書類や電気製品がダメになったので、事前に大事なものは2階にあげるべきであった。支川のいたるところで冠水をしており、避難準備、高齢者避難開始の時点での早期の避難が必要であった。避難をしていない高齢者に対して、避難を促すのに苦労した。また、消防団の広報を聞き取れない場合もあり、次の日に救助を受けたケースもあった。非常用持ち出し袋などを準備していない人が多かったなどの指摘があった。

 郡山市セーフコミュニティ推進協議会との意見交換では、郡山市婦人団体協議会からは、避難所における温かな食事の提供に配慮した。郡山市自治会連合会からは、情報発信のタイミングが良く早めの避難につながった、道路冠水等により公共交通機関が使えず、避難について課題が残ったこと、高齢者で避難をしない人を説得するのに大変であるなどの意見があった。郡山市消防団からは、阿武隈川周辺住民の中には、過去の例をもとに避難しない方も多かった、氾濫危険水位を超え、消防団退避の後の救助要請については垂直避難を指示し、翌朝に救助活動した例もあった、また、避難時に非常持ち出し袋を準備していない人が多かったなどの指摘があった。これに対しては分かり易い情報発信の在り方をさらに検討することにした。また、災害時にウェブサイトの集中により、閲覧できない時間があり、今後強化をはかることとした。避難について公共交通機関が使えないなどの、想定外の課題が確認された。

 町内会長と市長との懇談会においては、浸水被害が発生しないように、堤防嵩上げ、河道掘削等を速やかに実施すること、河川整備、河川監視カメラ等の水害対策を実施すること。支川に隣接した避難所では、浸水が起こると避難した住民を別の避難所に誘導する事態となり、避難所指定の在り方を含めて再検討する。避難所設置に際しては、感染症対策としての健常者、体調不良者別の動線確保、消毒、段ボールベッドの数と空間の確保や暖房、プライバシーの保護が必要である。特に着替え用の衣類が最も必要となった。避難が長期に及ぶと、温かいご飯やみそ汁が欲しいとの要望があり、おにぎり等の用意が必要である。地区の半数が高齢者となっており、防災無線やSNS等の災害情報取得が困難で、高齢者への情報伝達手段の検討が必要であるなどの意見があった。

 郡山市女性グループ連合会と市長との懇談会では、平常時における地域連携や体制整備の充実が、災害時の対応に欠かせないこと、災害情報や避難情報はきめ細やかに発信されていたとの意見がある反面、高齢者への情報伝達についての課題が残ることなどが指摘された。

 民生委員協議会会長と市長との懇談会では、道路が冠水しており、作成した「防災マップ」が使えなかった。多くのボランティアに協力して頂いたが、人手が不足したので、平時から共助を意識したコミュニティづくりが必要である。民生委員だけでは、対応に限界があり他団体との協力が必要である。避難所では関係職員やボランティアが懸命に対応してくれたなどの意見があった。これに対しては民生委員を含めた、地域の支援の仕組みづくりを検討する、日ごろから各団体間の連携と情報共有を図るとした。


<災害対応検証ワーキンググループ(庁内)>

 災害対応検証ワーキンググループの取りまとめは5つの視点からなっている。以下に、主な課題と対応について述べる。

 視点1の初動体制及び災害対策本部の在り方では、災害情報の収集・発信や避難情報発令、被害報告、物資輸送、電話対応等の多大な業務が本部事務局に集中するため、人的な体制強化が必要であること、応援増強により、本部スペースが手狭となること、さらに、連絡が繁多となるため通信回線等の設備増強があげられた。特に災害対策本部は開設直後から業務が増大し、発災中及びその後の対応や事務処理に必要な人員が拡大するために、作業空間が必要となることは、過去の災害事例においても指摘されている。また、災害時の各行政センターは地域の災害対策本部の要となるが、被害規模の大きな地域の行政センターでは応援体制が整うまでに時間を要した。また、安積行政センターでは電気設備が水没し停電となり、業務に遅延が生じた。さらに、行政センターとの情報共有や連携を密にすることなどの課題が指摘された。水没による停電は、行政機関のみならずポンプ施設や避難所、多くの事業所等でも見られており、今後の災害対策における要点となる。備蓄品の管理・配送では本部事務局職員が物資搬送を担っており、初期段階からの人員不足と、各種支援物資等の保管場所の不足、物資輸送や職員移動で公用車が不足した。さらに、備蓄品の在庫が常に変動して適切な管理ができない、道路事情等により避難所への搬送ルートの確保が困難な場合があり、災害時の備蓄品管理と輸送の課題が指摘された。

 視点2の情報収集及び発信のあり方において、避難情報の発信では計16回を発令したが、市民に分かり易い発令方法を検討すること、河川水位が夜間に危険水位に達すると予測されたため日没前に避難勧告等を発令したこと、避難所開設や避難勧告発令情報等について、庁内への周知も併せて行うべきことなどが指摘された。分かり易い情報発信を検討し、地域防災計画に発令のタイミングを明記することとした。また、市ウェブサイトにアクセスが集中し、閲覧しにくい課題については、アクセス数増加への対応と分かり易い表示について検討することとした。

 その他情報の発信・集約では、必要な情報が時間の経過とともに変化するため、予想される問い合わせ内容を時系列に提供するマニュアルを整備する。また、本部等への各種報告は状況が刻々変化することから、報告基準の明確化や簡素化が必要である。協定締結団体等からの支援についての情報共有が必要であり、物資等支援リストをファイルサーバーに掲示し庁内共有化を図ることとした。さらに、地域の核となる行政センターに各種団体等の情報を集約すること、町内会や消防団、自主防災組織等の地区レベルの災害対応を整備し、対応にあたることなどを検討した。

 障がい者や外国人等への情報発信では、要配慮者へ必要な情報が確実に届く仕組みにおいて、遠隔手話サービス(テレビ通話)を活用し情報発信する。外国人が所属する学校や企業への多言語ウェブサイトの紹介、「外国語ポータルサイト」でやさしい日本語により簡潔に発信する、市国際交流協会のフェイスブックにより災害情報を発信する。既存の5台のほか、避難所となる公民館41館に自動翻訳機を配備することなどが検討された。

 視点3の避難対策のあり方では、避難所設置、支援体制において、自動車による避難者が多く、駐車場が満車で別の避難所を案内したケースがあった。公共施設の駐車場の駐車可能台数を示して開放することや、災害時の駐車場の利用について、民間企業と協定締結を進める。

 また、避難所設置、支援体制では、避難所の設置運営には、被害状況や対策本部の状況等を即時に把握することが必要で、庁内情報システムへの情報掲示による情報共有及び避難所への情報端末の配備で対応する。避難所運営の長期化では、通常業務と避難所業務の両立による職員の負担増が課題となった。避難者向けの避難所生活マニュアルを作成し初期段階で周知し、各避難所に情報端末を配置し、必要な援助の情報収集や本部との情報共有等を図る。

 プライバシーの確保及び要配慮者への対応では、体育館ではプライバシーの確保や着替え、授乳スペースが不十分であり、間仕切り、テント等を活用しプライバシーの配慮に努める。高齢者等の要配慮者については、避難所開設に併せ福祉避難所の開設及び移送体制も準備する。旅館、ホテル等を避難所として活用するための災害協定を締結する。外国人避難者への対応について、通訳者の配置が困難な場合は、翻訳機等を活用して意思疎通に努める。

 食事及び支援物資では、食事は弁当、パン、カップ麺等が中心で、避難が長期にわたる場合に栄養面の不安があり、食事について予算、配送、調達、栄養面からの検討をさらに重ねる。弁当の必要数把握が困難で廃棄が生じる課題に対しては、各避難所に情報端末を配置しタイムロスの少ない連絡体制、発注方法を構築する。必要な物資を必要な時に避難所に配送できないことについては、民間事業者と災害協定締結を検討し配送体制の強化を図るとともに、支援物資がタイムリーに配送できるよう備蓄品、保管場所等を見直す。さらに、衛生用品等については、初期段階からプッシュ型で配置することとした。  

 衛生、健康管理では、ダンボールベッドの数が限られており、床に直接寝たことについては、ダンボールベッド数を増やし活用を促進する。初期段階において暖房設備がない避難所があり、寒さ対策が必要なことについては、避難所の暖房設備、電気容量等について再確認し必要な整備を行う。高齢者の避難については、効果的な健康支援ができるよう、生活実態を踏まえた巡回支援体制を検討し、避難が長期にわたる場合は各種団体等に高齢者支援活動を依頼する。入浴設備やシャワー設備のある公共施設や民間施設の有効活用を図るために、公共・民間入浴施設等の紹介や可能な送迎支援を行う。体育館等避難施設のシャワー利用を検討することとした。  

 視点4の被災者支援のあり方では、支援制度において、総合相談窓口の相談者数と対応者数に不均衡な時期があったことは、業務ごとに対応状況を数値化し、適切な人員配置に努める。各種支援制度の内容の決定、公表の迅速化については、各部局で随時支援制度のデータを更新し、情報共有を図り、迅速に公表できるように管理する。紙申請書で内容ごとに対面での受付が基本となっていたことから、ネット申請ができるようにフォーマットを準備するとともに、共通項目の簡略化を検討する。

 支援情報の発信では、様々な状況にある被災者へ遅滞なく、確実に情報提供するためにウェブサイトでの支援情報等の集約化を図り、広報紙による特集、避難所や総合相談窓口等への掲示等によりきめ細かな情報提供に努める。被災農家や被災事業所向けの最新の各種支援制度では、LINE等の加入者促進や情報発信ツールを拡充していくほか、JAや工業団地会等の関係団体と災害時等における情報共有、連携体制を確認する。

 り災証明書の発行では、新システム仕様やトラブル等により円滑、迅速な発行ができない、応援職員が短期間で交代となるため頻繁に研修や説明が必要となったことに対しては、り災証明発行作業を検証し、作業手順ごとのマニュアルを作成、公開するとともに、研修を行うなど、災害時に速やかに対応できる体制を構築する。学生等で住民登録がない被災者も多く、居住や世帯の確認等に時間を要する場合、学校と災害時の情報共有について協議し迅速な発行に努めるとした。

 住宅支援では、準備できた物件が、必ずしも被災者が要望する地域や設備等に合致しない案件(風呂、エレベーター、駐車場等の有無等)が発生した。福島県と連携し、民間賃貸住宅の借上げ住宅のあっせんを進める際に、速やかな物件の特定等さらなる円滑な支援を検討する。

 市税等の減免では、1件の申請書で5課の税目の減免申請が可能だったが、各税目で減免条件が異なる部分があり、説明が難しかった。減免関連について、市としての分かり易い対応の検討を行う。

 ごみ、廃棄物の処理では、被災者が利用しやすい災害ごみ置き場の設置及び効率的な災害ごみの収集体制について検討する。事前に複数の災害ごみ仮置き場候補地を選定し、収集体制も含めて計画を立てるとともに、土地の所有者又は管理者と協議をしておく。一般災害ごみを優先としたため、企業ごみ(水没車両を含む)が長期間自社保管となった課題については、公共施設等に車両避難場所を確保すること、公共性の高い事業者等との協定締結等を協議中であるとした。

 視点5の浸水対策の在り方においては、河川では阿武隈川において越水、溢水が発生し、その支川では越水、堤防決壊等が多数発生するとともに、大規模な内水被害が発生した。国管理河川において、阿武隈川緊急治水対策プロジェクトを実施し、ハード整備として、水位低下対策、支川堤防強化等の治水対策を推進する。ソフト対策としては地域単位での防災体制の構築、バックウォーターを考慮した危機管理対策の推進を行う。県管理河川においては、福島県緊急水害対策プロジェクト(2024(令和6)年まで)において、ハード整備として、河道掘削、堤防強化、樹木伐採を、ソフト対策として、危機管理型水位計及び河川監視カメラの設置数拡大を図る。

 市管理河川においては、ハード整備として河川ごとの河道計画策定及び浸水対策検討を行うとともに、河道掘削や調整池等の整備を進める。ソフト対策として、ドローン活用による河川台帳の電子化、高度化を図り災害時に活用する。道路では、路面や路肩、橋りょう等に被害が発生するとともに、道路に土砂が堆積し通行に支障が生じた。市道の冠水による地下道や低地の通行不能に対しては、災害協定を締結している各種団体と緊密な連携及び情報共有を図りながら迅速な応急復旧を行う。阿武隈川、笹原川、谷田川等の樋管に設置した内水排水ポンプの商用電源引込の分電盤が水没して稼働停止したことなどから、地下道の排水機能の向上、分電盤の位置変更や分割を行い、機能停止のリスクを低減させる。内水排水ポンプ及び分電盤はその位置について検討するとした。

 上下水道では、阿武隈川では越水、溢水が発生し、その支川では堤防決壊等が多数発生するとともに、大規模な内水被害が発生したことに対しては、雨水排水施設の雨水ポンプ場の耐水化強化、水位等の監視体制強化による状況に応じた迅速な対応体制の整備を行う。国や県が実施する河道掘削による河川水位低下策等を前提として、著しい内水被害地区における排水強化を図る。可搬式排水ポンプの整備2セット4台、このほか、内水処理用排水ポンプを1ヵ所設置済みであり、郡山市ゲリラ豪雨対策9年プランの確実な実施により雨水貯留施設の増強を図るとした。

 ため池・農業施設では、一部ため池において雨水貯留施設機能が働かず下流で被害が発生したことについては、ため池の事前放流の徹底による貯水機能の確保と水位計設置等による適切な水位管理、ため池管理団体との緊急連絡体制の確立と低水管理の徹底を図るとした。農業用水の河川流入抑制の検討では、土地改良区との緊急連絡体制の確立と断水措置要請により、農業用水の河川流入抑制の検討を行う。

 土地利用では、「郡山市立地適正化計画」(2019(平成31)年3月策定)の居住促進区域の一部で浸水被害が発生したことについては、被災状況を踏まえ立地適正化計画における居住促進区域の見直し等を検討する。浸水リスクが高い地域からの移転を希望する住民及び事業者への支援については、被災者の住居移転に対する経済的支援の実施、居住促進区域への移転に対する補助制度の新設、被災者の市街化調整区域への移転に対する規制緩和、市街化調整区域への移転に関する許可基準を新設した。

 ハザードマップでは、居住地の水害リスクを知らない市民もいることから、周知、啓発が必要である。全世帯へ新ハザードマップを配布済であり、平時からハザードマップについてあらゆるチャンネルで周知、啓発を図るとした。