(1) 認定制度
2015(平成27)年より、文化庁は地域の歴史的魅力や特色を通じて我が国の文化・伝統を語るストーリーを「日本遺産(Japan Heritage)」として認定する制度を開始した。その主旨は、「我が国の文化財や伝統文化を通じた地域の活性化を図るためには、その歴史的経緯や、地域の風土に根ざした世代を超えて受け継がれている伝承、風習などを踏まえたストーリーの下に有形・無形の文化財をパッケージ化し、これらの活用を図る中で、情報発信や人材育成・伝承、環境整備などの取組を効果的に進めていくことが必要」とされている(文化庁『文化庁日本遺産ポータルサイト』)。
従来、一般的である文化財指定や世界遺産登録は、登録・指定される文化財(文化遺産)の価値付けを行い、保護されることが目的とされている。これに対して日本遺産は、地域に点在する遺産を「面」として活用し、発信することで地域活性化を図ることが目的に含まれている。認定によってストーリーを語る上で不可欠な魅力ある有形・無形の様々な文化財群(構成文化財)を総合的に活用する取組みが文化庁により支援されることになる。
その日本遺産事業の方向性としては1.地域に点在する文化財の把握とストーリーによるパッケージ化、2.地域全体としての一体的な整備・活用、3.国内外への積極的かつ戦略的・効果的な発信の三つに集約される。
認定申請の手続きは、市町村が申請者となり、都道府県を経由して文化庁へと行われる。ストーリーが広域の場合は、複数の市町村、都道府県にわたって連携した申請と認定も行われている。
(2) 認定状況
認定件数は2020(令和2)年の東京オリンピック・パラリンピックまでに100件程度とすることが適当とされた。(文化庁『日本遺産ポータルサイト』「日本遺産の創設にあたって」〔告示文章『平成27年3月文化庁「日本遺産(Japan Heritage)」事業について』〕)
初年度の2015(平成27)年度に18件、2016(平成28)年度に19件、2017(平成29)年度に17件、2018(平成30)年度に13件、2019(令和元)年度に16件、2020(令和2)年度に21件となり、2023(令和5)年度現在でその総数は104件となっている。なお2021(令和3)年度からは「日本遺産審査・評価委員会」における審議による「候補地域」の認定となった。また、認定遺産については初年度認定から順に総括評価・継続審査が行われるようになり、その中で他の地域モデルと成り得る「重点支援地域」の選定も行われるようになった(2015(平成27)年度認定中4件、2016(平成28)年度3件、2017(平成29)年度2件)。(文化庁『文化庁ホームページ』「広報・報道・お知らせ/報道発表」掲示告示)