(4) 認定後の動き

a 一本の水路ブランド認証事業

 この事業は、日本遺産「一本の水路」プロモーション協議会が、日本遺産として認定された「未来を拓いた「一本の水路」-大久保利通“最期の夢”と開拓者の軌跡 郡山・猪苗代-」のストーリーにおける「挑戦」、「多様性」、「共生」のイメージに深く関連付けられる優れた商品や、優れた取り組みを行っている団体等をブランド認証することにより、各種団体等と協働で日本遺産ストーリーの普及啓発と日本遺産魅力発信を推進し、地域の活性化に資するとともに、ブランド化を通じて日本遺産ストーリー及びそのイメージを次世代へ継承することにつなげることで、シビックプライドの醸成に寄与することを目的としている。2018(平成30)年4月にはブランド認証ロゴマークが発表され、9月14日に第1回の認証が発表された。認証は産品部門(2023(令和5)年11月現在59件)、活動部門(2023(令和5)年11月現在29件)とされ、郡山市、猪苗代町、須賀川市、本宮市が区域とされている。(郡山市『一本の水路ブランド認証事業実施要綱(郡山市要綱)』)


b 認定後の主な活動

 新聞に報道された認定後の活動を表1にまとめた。同表より主な活動を記すと認定直後に岐阜市の呼びかけにより日本遺産サミットが開催された。また、同年に安積疏水は国際かんがい排水委員会(ICID)より世界かんがい施設遺産として登録された。

 関連する活動は日本遺産「一本の水路」プロモーション協議会(事務局・郡山市文化スポーツ部)が中心となり、2018(平成30)年には同協議会より魅力発信事業功績団体へ感謝状が贈呈されている(受賞団体:熱海史談会、猪苗代湖の自然を守る会、猪苗代ロータリークラブ、KOUSEI、市開成館案内ボランティア、郡山水と緑の案内人の会、湖南町区長会、輝く猪苗代湖をつくる県民会議)。この他に安積疏水土地改良区、ライオンズクラブ、日本郵便、郡山市民アマチュア無線実行委員会、郡山商工会議所青年部、郡山市役所関連などによる継続した活動がみられる。また国外からは2019(令和元)年の国際協力機構(JICA)による研修員の見学、2021(令和3)年にはルワンダ国駐日大使の市長表敬訪問などがあった。

 また、コンテンツ作成としては2017(平成29)年に郡山市による日本遺産Webページの開設、NTTドコモ東北支社映像コンテンツ作成費用寄付、2018(平成30)年に日本遺産「一本の水路」プロモーション協議会による仮想現実(VR)技術を活用したPR映像作成、郡山市内の10ロータリークラブでつくる国際ロータリー第2530地区中央分区と福島ガイナックス(三春町アニメ制作会社)によりアニメーションが制作された。2020(令和2)年には郡山市文化遺産総合活性化実行委員会による「郡山歴史かるた」が作成され市内の小学校に寄付された。また、在オランダ日本大使館公式フェイスブックでオランダ人技師ファン・ドールンの功績を紹介する動画が公開された。2021(令和3)年には郡山市の音楽愛好家団体「深音(みおん)グループ」により安積疏水の魅力を周知するDVD「日本三大疏水 安積疏水~2022年140周年~」が作成され郡山市へ寄贈がなされた。

 この他、ウォーキングやバスツアーなどのイベントが複数団体により複数回開催されている。

表1 新聞報道にみる日本遺産『未来を拓いた「一本の水路」』関連行事年表
西暦 平成・令和 内容 開催団体 場所
2016 28 6 日本遺産認定後の安積疏水関連施設を訪ねるツアー初回 郡山水と緑の案内人の会
2016 28 7 1~2 日本遺産サミット 岐阜市 岐阜市内
2016 28 ボランティアガイド、語り部育成事業 郡山市
2016 28 11 安積疏水 世界かんがい施設遺産登録発表 国際かんがい排水委員会(ICID)、農林水産省
2016 28 11 18 「一本の水路」石碑建立除幕式 郡山開成ライオンズクラブ 開成山公園
2017 29 1 24 「一本の水路」日本遺産認定記念切手発売 日本郵便
2017 29 1 28 ボランティアガイド育成研修会開始 日本遺産プロモーション協議会(事務局・郡山市文化スポーツ部) 郡山市役所
2017 29 1 30 映像放映用ディスプレー寄贈 贈:県中部郵便局長会 受:日本遺産プロモーション協議会
2017 29 2 日本遺産ウエブページ開設 郡山市
2017 29 6 1 渡辺閑哉記念碑除幕式(ライオンズクラブ100周年記念奉仕事業「コミュニティー・レガシー・プロジェクト」) 企画:二本松、本宮、岩代、東和、安達の5ライオンズクラブ〔332-D地区(福島県)第1リージョン(R)・第2ゾーン(Z)〕 二本松市岩代公民館敷地内
2017 29 7 29 アマチュア無線による国内外向けPR活動開局セレモニー 郡山市民アマチュア無線実行委員会 郡山市
2017 29 9 郡山商工会議所青年部2017年度事業「~日本遺産ストーリーの舞台、安積疏水・安積開拓を知ろう!」イベントポスター作製 国際アート&デザイン大学校 郡山市
2017 29 9 16 「安積疏水を歩こう チューリップウォーキング」開催 郡山商工会議所青年部
2017 29 10 1~31 安積開拓や安積疏水に関する場所を訪れるスタンプラリー実施 郡山商工会議所青年部
2017 29 10 2~8 「日本遺産魅力発信 映像と写真展」 郡山市主催、NTTドコモ東北支社映像コンテンツ作成費用寄付(東北応援社員募金) JR郡山駅西口駅前広場
2017 29 11 12 日本三大疏水サミット 郡山商工会議所青年部 郡山女子大学
2017 29 11 12 「巨大海苔(のり)巻き作り」(130m) 郡山商工会議所青年部 開成山公園
2018 30 2 24、25 日本遺産「未来を拓いた『一本の水路』」の物語の舞台を巡るモニターツアー開催、参加者が交流サイト(SNS)で魅力発信 日本遺産「一本の水路」プロモーション協議会
2018 30 3 17 日本遺産フォーラム開催、魅力発信事業功績団体へ感謝状贈呈(受賞団体:熱海史談会、猪苗代湖の自然を守る会、猪苗代ロータリークラブ、KOUSEI、市開誠館案内ボランティア、郡山水と緑の案内人の会、湖南町区長会、輝く猪苗代湖をつくる県民会議) 日本遺産「一本の水路」プロモーション協議会 郡山市役所
2018 30 4 14 日本遺産「安積疏水」を巡るバスツアー実施 実施:郡山21世紀経済クラブ 案内:郡山水と緑の案内人の会
2018 30 4 27 仮想現実(VR)技術を活用したPR映像お披露目、日本遺産ブランド認証ロゴマーク発表 日本遺産「一本の水路」プロモーション協議会
2018 30 5 1日~6月 ふれあい科学館に日本遺産「未来を拓いた『一本の水路』」の舞台を巡る仮想現実(VR)の映像体験コーナーを設置 日本遺産「一本の水路」プロモーション協議会 ふれあい科学館
2018 30 5 14 熱海多目的交流館「ほっとあたみ」開所、同館観光物産館にVR映像の体験コーナー常設 日本遺産「一本の水路」プロモーション協議会 熱海多目的交流館「ほっとあたみ」
2018 30 6 19 猪苗代湖・安積疏水・安積開拓を結ぶストーリー「未来を拓いた『一本の水路』」のアニメーション制作完成試写会 制作:郡山市内の10ロータリークラブでつくる国際ロータリー第2530地区中央分区 福島ガイナックス(三春町アニメ制作会社)  郡山市ホテルハマツ
2018 30 7 28 第12回安積疏水を訪ねる小学生の集い 安積疏水土地改良区
2018 30 9 14 「日本遺産一本の水路ブランド認証事業」第1回認証34件発表 日本遺産「一本の水路」プロモーション協議会
2019 31 3 6 長期研修員の「日本の近代化を学ぶ福島ツアー」見学開催 国際協力機構(JICA)
2019 1 6 6~7 JICA本部職員、郡山市訪問(安積疏水の歴史や市内の農業の取り組みを学ぶ) 国際協力機構(JICA)
2019 1 6 8 安積疏水について学ぶイベント「私とあなたの安積疏水」開催 郡山商工会議所青年部 ミューカルがくと館
2019 1 6 26 地域デビュー講座「きらびと学級」開講(初回:安積疏水の開拓事業を学ぶ) 郡山市大槻東地域公民館 郡山市大槻東地域公民館
2019 1 9 8 安積疏水をテーマとした日本遺産「未来を拓いた『一本の水路』」の文化財を巡る「健康ウォーキング」開催(ふくしまレクリエーションフェスタ2019の一環) こおりやま歩こう会
2019 1 9 29 郡山市熱海町内にて第1回1本の水路みちウォーク開催 開催:福島県ノルディックウォーキング協会

案内:郡山市水と緑の案内人

郡山市熱海町内
2019 1 11 9 子どもたちのガイド案内による安積疏水関連施設を巡る「一本の水路バスツアー」開催 郡山市中央公民館
2020 2 4 在オランダ日本大使館公式フェイスブックでオランダ人技師ファン・ドールンの功績を紹介する動画公開 在オランダ日本大使館 フェイスブック
2020 2 6 26 安積開拓の歴史を学ぶ「郡山歴史かるた」を作成(文化庁2019年度文化資源活用事業費補助金)し、市内の小学校に寄付。絵柄は郡山市の合名会社「開成社」が2009年に135周年記念として作成したインターネット版絵本のイラストを引用。 郡山市文化遺産総合活性化実行委員会 郡山市役所
2020 2 11 15 青柳いづみこさんレクチャーコンサート「一本の水路~水と音楽」開催、及び郡山市国際政策課による「未来を拓いた『一本の水路』」をテーマに安積疏水の歴史を解説 郡山市中央図書館 郡山市中央図書館
2021 3 8 20 ルワンダのルワムキョ・アーネスト駐日大使が品川萬里市長を表敬訪問(ルワンダと郡山市は2013〔平成25〕年からNPO法人ルワンダの教育を考える会〔福島市〕を通じて継続交流) ルワンダ国 郡山市役所
2021 3 8 24 安積疏水の魅力を周知するDVD「日本三大疏水 安積疏水~2022年140周年~」を作成し郡山市へ寄贈 郡山市の音楽愛好家団体「深音グループ」 郡山市役所
出典:福島民報、福島民友、読売新聞記事より作成

c 市民の評価

 郡山市では認定された2016(平成28)年度以降、「まちづくりネットモニター」により、日本遺産をテーマにしたインターネットによるアンケートを毎年度実施している。内容は郡山を住みやすいまちにするための、さまざまなテーマが、認知度、関心度、取組などに分けて項目立てされている。日本遺産は、地域の歴史や風土に根ざし、世代を超えて受け継がれるストーリーであり、このストーリーに関わる文化財や伝統文化が活用されているか、今後の活用などを把握するアンケート内容となっている。その中で、日本遺産になったことを知っているかという質問に対しては、知っているとの回答率が、2016(平成28)年から2021(令和3)年に49.3%、61%、57.6%、65%、71%、64%と推移した。その他の質問事項として、興味ある構成文化財、情報発信、活用や観光誘客で必要な取組み、ボランティアガイドや盛り上げへの参加活動、PRのために効果的な商品やツール、自由記述などで質問項目が設定されている。


d 観光・インバウンド効果

 2016(平成28)年度には猪苗代湖プロモーション事業に始まり、翌2017(平成29)年度には日本遺産魅力発信推進事業として猪苗代湖も含む観光事業が続けられている。

 この事業の目的は、高いポテンシャルを有する日本遺産と猪苗代湖を「国際観光資源」「歴史的資源」として国内外へのプロモーションに取り組むことにより、インバウンドを含む観光誘客や交流人口の増加につなげるとともに地域の活性化や魅力の発信を図ることにある。郡山市文化スポーツ部国際政策課により実施され、前年度の実績評価が行われている。事業進捗は対象を市民として活動指標で評価され、内容は「プロモーション協議会の会議開催回数」「日本遺産バスツアー開催回数」「湖南七浜の観光客数」「ウェブページアクセス数」「インスタグラム更新回数、フォロワー数」ほかとなっており、歳出、歳入と共に集計され、経年比較されている。2021(令和3)年の実施事業についての、2022(令和4)年実施の評価では新型コロナの影響によりウェブページアクセス数や日本遺産関連施設訪問者や活動が減少したが、商品開発やボランティアガイドとの連携事業などインナープロモーションの充実が図られている。また情報発信は増加傾向にあり成果が徐々に表れているとされている。課題としては広域圏自治体とも連携した歴史的資源の幅広い活用の検討が必要とされている。