(3) 近年のため池に関する課題解決のための法整備等の進捗

a 「農業用ため池の管理及び保全に関する法律」

 制定の背景:自然災害によるため池の被災が頻発している中、ため池の権利者の世代交代が進み、権利関係が不明確かつ複雑になっていることやため池の管理組織の弱体化により日常の維持管理に支障をきたすおそれがあることが課題となっていた。

 このため、施設の所有者等(所有者、管理者)や行政機関の役割分担を明らかにし、ため池の適正な管理及び保全が行われる体制を整備することを目的として、「農業用ため池の管理及び保全に関する法律」が2019(平成31年)年4月に制定され、2019(令和元)年7月に施行された。


b 「防災重点農業用ため池に係る防災工事等の推進に関する特別措置法」

 この法律は、2020(令和2)年に制定、施行された。郡山市ではこの法律の施行に伴い2021(令和3)年「防災重点農業用ため池」の指定をし、防災工事などが適切に推進できる体制を整えている。『農業用ため池データベース』によると2023(令和5)年3月31日時点での郡山市内の防災重点農業用ため池の数は103であり、市内の全ため池634のうち16.2%を占めている。


c ため池に関する新聞報道

【ため池ハザードマップ公表】(『読売新聞』2018年8月30日)

 西日本豪雨でため池などの決壊が相次いだことを受け、2018(平成30)年に郡山市は、ため池が決壊した場合に想定される被害のハザードマップ(被害予測地図)を、当初予定より約半年前倒しして発表したとの記事が掲載された。

 東日本大震災での藤沼湖(須賀川市)の決壊の例などもあり、農業用水や親水機能として重要な役割を果しているため池も、ひとたび決壊してしまうと住民の生命や財産を脅かす存在となりうる。ため池が決壊した際の浸水範囲、水深、水の到達時間、避難方向、避難所を明記したハザードマップの作成により、市民の防災・減災意識の向上につなげる狙いがあった。当初は市内34か所の防災重点ため池について作成したが、2021(令和3)年の改訂により農業用ため池85ヵ所、土地改良区の農業用ダム等29ヵ所の計114ヵ所のハザードマップが整備された。


【全ての農業用ため池調査へ】(『福島民報』2018年10月26日)

 2018(平成30)年の10月22日に起きた三穂田町野田の「長岫(ながくき)池」の漏水を受け、市は25日、市内649ヵ所(当時)のすべての農業用ため池を調査すると発表したとの記事が掲載された。

 ため池の堤体や樋管等の附属設備は老朽化や管理の担い手不足等が懸念されていることから、調査結果を生かした対応策が求められている。対策の一例として、2019(平成31)年2月にため池の適切な管理を学ぶ勉強会が開催された。


【農業用ため池の保全管理強化 サポートセンター開設へ】(『福島民報』2020年3月20日)

 福島県は2020(令和2)年の4月から県土地改良事業団体連合会内に「福島県ため池サポートセンター」を開設し、適切な管理に向けた技術的な指導や助言、点検結果の分析と対策の検討などを実施。継続して安定的な保全管理につなげるとの記事が掲載された。

 農業用ため池の保全管理の向上への取り組み体制の強化が図られることになった。


【雨水貯留の可能性調査 善宝池の改築検討】(『福島民友』2021年9月12日)

 2021(令和3)年9月議会の一般質問への答弁で、郡山市は、貯水量拡大に向けて富久山町の善宝池を調査し、雨水をためる貯留施設に改築できるか検討を進めているとした。同池は個人が所有しており、掘削による貯水量増加が見込まれれば翌年度にも構想をまとめて改築を提案するとの記事であった。

 ため池の雨水貯留という防災機能が期待されていることが窺える。

(髙橋 康彦)