(1) 治安の概況

 全国における刑法犯の認知件数は、2021(令和3)年は56万8,104件となり、前年に引き続き戦後最少を更新した。認知件数減少の内訳をみると、官民一体となった総合的な犯罪対策の推進や防犯機器の普及、その他の様々な社会情勢の変化を背景に、総数に占める割合の大きい街頭犯罪及び侵入犯罪が2003(平成15)年以降一貫して減少している。一方で、なりすまし詐欺(特殊詐欺)については、2018(平成30)年以降、認知件数・被害総額共に減少してきたところ、2021(令和3)年中の被害額は前年比で減少したものの、認知件数は4年ぶりに増加に転じたほか、犯行手口の傾向が変化しているところであり、厳しい状況が続いている(警察庁『令和4年版警察白書』)。

 福島県内においても、刑法犯認知件数は、2002(平成14)年をピークに19年連続で減少し、2020(令和2)年には2,655件と過去最少を記録した。なりすまし詐欺は、2014(平成26)年以降、100数件台で推移してきたが、2020(令和2)年は135件、2021(令和3)年は118件と増加傾向にある。(図1、図2、図3)


図1 全国 刑法犯認知・検挙状況の推移(2012(平成24)年~2021(令和3)年)


図2 福島県 刑法犯罪の認知件数の推移


図3 福島県内のなりすまし詐欺認知件数・被害金額

 郡山市における刑法犯認知件数は、2002(平成14)年以降減少し、2012(平成24)年の3,390件から2021(令和3)年には1,545件と45.6%減少した。一方、郡山市の一市で県全体の23%前後を占めているほか、殺人や強盗等の凶悪犯罪が毎年発生している。高齢者を対象とするなりすまし詐欺(特殊詐欺)は、その7割以上が中通り方部で発生し、特に、郡山市は、2018(平成30)年から認知件数、被害額ともに年々増加して、2021(令和3)年には県全体の37.3%を占めている。また、2011(平成23)年に発生した東日本大震災や2020(令和2)年に感染拡大が始まった新型コロナウイルス感染症に関連する犯罪も増加するなど、依然として厳しいものがある。(図4)


図4 郡山警察署・郡山北警察署でのなりすまし詐欺認知件数・被害金額

 こうした情勢の下、郡山市は、安全で安心な街づくりを目指してWHO(世界保健機関)地域安全推進協働センターが推奨するセーフコミュニティ活動(2018(平成30)年2月2日国際認証取得、2023(令和5)年2月4日再取得)を推進した。同活動は、けがや事故をデータ分析して原因を究明するとともに、団体、機関、市民、行政等が垣根を越えて連携、協働して予防活動を行う(郡山市(2023)『セーフコミュニティこおりやま』)というものであり、2018(平成30)年4月1日、郡山市役所市民安全課を「セーフコミュニティ課」に組織改編し、郡山市セーフコミュニティ推進協議会を母体として「防犯対策委員会」、「高齢者安全対策委員会」、「子供安全対策委員会」、「交通安全対策委員会」等六つの分野別委員会を設置し、犯罪や事故の予防活動に取り組んだ。

 2011(平成23)年3月に発生した東日本大震災や引き続く東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う治安対策では、郡山市は、郡山市災害対策本部を継続設置し、関係機関、団体、企業等と連携して、被災者対応やライフラインの復旧、除染等による放射線量低減対策を推進する中で、特に、復興事業への暴力団の介入を排除するため、郡山市除染業務等暴力団排除連絡協議会を設置して暴力団の排除に取り組んだ。

 福島県警察は、東日本大震災後の2012(平成24)年以降も被災地や避難者の安全・安心の確保と治安維持を図るため、同年2月、全国22の都道府県から特別出向した350人の警察官により、愛称「ウルトラ警察隊(ULTRA POLICE FORCE)」を組織し、県警察特別警ら隊や機動捜査隊のほか、避難住民の多い郡山警察署、郡山北警察署など15の警察署に配属した。これらを受けて、郡山警察署は避難所となるビッグパレットふくしまへの臨時交番を継続設置したほか、毎月10日、緑ケ丘仮設住宅において「おだがいさま交番分所」を開設した。郡山北警察署は仮設住宅において「ふれあい防犯広報活動」等に取り組んだ。また両警察署は防犯ボランティア団体等と協力し、仮設住宅住民との交流や相談、警戒活動、また情勢の変化に対応しつつ関係機関や団体と連携し、なりすまし詐欺被害防止や交通安全啓発活動などに取り組み、復興を治安面から支えた。郡山市でのウルトラ警察隊の活動は、避難解除や避難者の公営住宅への移転等により、2018(平成30)年3月でその任務を終えた。

 福島県警察本部は、2010(平成22)年4月、犯罪の広域化、国際化等に対応するため、県内6警察署(桑折・川俣・本宮・小野・会津美里・浪江の各警察署)の再編・統合を推進した。この中で、本宮警察署を廃止して郡山北警察署本宮分庁舎とし、本宮市と大玉村を同警察署の管轄とした。郡山北警察署の管轄自治体の拡大により、郡山市や本宮市、大玉村への治安に対する影響が注目されてきたが、治安を推し測る指標の一つとしての刑法犯認知件数は減少を続け、10年前と比較して2021(令和3)年には45.3%減少しているほか、交通事故も減少し、懸念された影響はなかった。