郡山市における殺人、強盗等の凶悪事件は、2012(平成24)年から2021(令和3)年までの10年間で101件、なりすまし詐欺(特殊詐欺)は221件(被害総額5億7,518万円)発生した。
福島県内では、児童虐待、配偶者暴力(DV)、ストーカー事案の相談が増加しており、特に、警察が児童相談所に児童虐待として通告した件数は、2014(平成26)年の67件から2020(令和2)年には1,271件(『福島民報』2021年2月5日)と急増した。郡山北警察署の地域安全白書を見る限り、郡山市においてもDVやストーカー事案は県内同様に増加傾向を示していることが窺える。
暴力団構成員及び準構成員等の過去10年間の推移は、全国的には、2005(平成17)年以降減少し、2021(令和3)年末には、暴力団対策法が施行された1992(平成4)年以降最少となった。この背景としては、近年の暴力団排除活動の進展や暴力団犯罪の取締りに伴う資金獲得活動の困難化等により、暴力団からの構成員の離脱が進んだことなどが考えられる(警察庁『令和4年版警察白書』)。一方、暴力団対立抗争事件は、2019(令和元)年以降対立が激化して2019(令和元)年に26件発生した。特に拳銃を使用した殺人事件や襲撃事件が相次ぎ、社会に大きな不安を与えた。
福島県内では、2016(平成28)年12月、福島市の暴力団事務所で暴力団同士の拳銃使用殺人未遂事件が発生したが、郡山市での発砲事件や対立抗争事件の発生はなかった。
a 一般犯罪
2012(平成24)年から2021(令和3)年までに発生した一般犯罪のうち、主なものは次のとおりである。
【2012(平成24)年】
凶悪事件は、9月に中田町の民家で男女二人が刃物のようなもので刺される事件など11件、なりすまし詐欺は、12月に無職女性(74歳)が市役所職員を名乗る男から600万円を詐取される事件など5件発生した。また、女性と同居の男が女性の娘(4歳)を足蹴りして左腕を骨折させ、逮捕されるという児童虐待事件も発生した。
【2013(平成25)年】
本町の青果店に凶器を示して押し入り、現金を強奪して逃走するなどの強盗事件が5件、ほか富久山町の小学校に通う男女3兄妹を車で連れ回して未成年者誘拐容疑で除染作業員が逮捕された事件など、凶悪事件は総数で9件発生した。なりすまし詐欺は、孫を名乗る男から250万円を詐取されるなどの事件が10件発生した。また、自営業者らが郡山市から東日本大震災の義援金76万円を詐取して逮捕された事件や、郡山市の除染会社が16歳と17歳の男2人を除染作業に従事させ、労働基準法違反容疑で棚倉警察署に逮捕された事件などが発生した。
【2014(平成26)年】
凶悪犯罪は、石渕町の菓子店から男が現金約5万円を強奪して逃走した事件、堂前町のスナックに男が押し入り経営者の女性から金品を強奪して逃走した事件、田村町金屋のコンビニ強盗事件等8件が発生した。なりすまし詐欺は、80代の無職女性が警察官を名乗る男から現金約880万円を詐取された事件等20件が発生した。また、5月に台新、安積町、島、大槻町、富久山町、喜久田町、日和田町の一般住宅駐車場等で57台(ほか本宮市荒井で21台)の車のガラスが割られるなどの器物損壊事件が発生し、大槻町の派遣社員が逮捕された。認可外保育所で経営者の男が園児に対する強制わいせつの疑いで逮捕される事件も発生した。
【2015(平成27)年】
凶悪犯罪は8件発生した。また1月、70代女性宅にみずほ銀行関連会社従業員と名乗る男から「ロト6の当選番号が分かる。供託金を積めば当選金を配分できる。」などと電話があり、男が指定する金融口座に数10回にわたり振り込み、3,400万円を詐取された事件や、会社役員の50代女性が融資保証詐欺で540万円をだまし取られるなどのなりすまし詐欺事件が29件発生した。駅前の雑貨店が危険ドラッグを販売し、薬事法違反容疑で男らが逮捕される事件も発生した。
【2016(平成28)年】
5月に大槻町の山林で元警備員が死体で発見された殺人・死体遺棄事件等の凶悪事件は11件発生した。また、70代女性が市役所職員を名乗る男から還付金名目で480万円を詐取されるなどのなりすまし詐欺事件は21件発生した。飲食店経営者が東京電力福島第一原子力発電所の事故による風評被害への賠償制度を悪用し、賠償金約1,600万円を詐取した容疑で逮捕された事件ほか、東日本大震災による雇用復興・創出事業委託料1,200万円を不正に受給した容疑で、郡山市が宇都宮市の人材派遣会社社長を告発した事件、郡山市が発注した除染土をいわき市小川町の山林に不法投棄して平田村の廃棄物運搬会社元社員が逮捕された事件なども発生した。郡山市と須賀川市で約90体に上る墓や寺の地蔵像などが壊される事件も発生し、来日中の韓国籍の男が白河警察署に逮捕された。
【2017(平成29)年】
凶悪事件は、コンビニ強盗未遂事件が2件、郡山市中野の男性宅外壁に灯油をまいて放火した事件、店舗兼住宅に放火して72歳の男が逮捕された事件など総数で8件発生した。なりすまし詐欺は、孫になりすました男が80代女性に複数回電話をかけて東京都内駐車場で130万円をだまし取った事件や、同様の手口で70代男性から100万円をだまし取ろうとした詐欺で、翌年、神奈川県の飲食店従業員の29歳の男が逮捕されるなどの事件が11件発生した。また、東京電力福島第一原子力発電所事故による営業損害賠償金、約3,300万円をだまし取ったとして飲食店経営者の女が逮捕された事件や、飲食店経営者ら3人が売春防止法(管理売春)違反容疑等で逮捕された事件も発生した。
【2018(平成30)年】
刑法犯認知件数は、前年比で350件(13.4%)減少した。凶悪事件は、交際相手の女性を富久山地内のアパートで殺害し、男が逮捕された殺人事件、元暴力団員で無職65歳男が知人男性に拳銃を発砲して銃刀法違反の疑いで現行犯逮捕された事件、60歳代女性が菜根屋敷の自宅で手足を縛られ金庫が奪われる強盗致傷で2人組の男が逮捕された事件、71歳の男が自宅倉庫に放火して逮捕された事件など12件発生した。なりすまし詐欺は、警察官を名乗る男からキャッシュカードをだまし取られる事件等21件発生した。また、偽装結婚して郡山市役所に婚姻届を提出したとして、日本人男女3人、中国人女1人が逮捕された事件、虚偽の出生届を提出して児童手当を不正に受給して再逮捕された事件、生後1、2週間の男児が星総合病院入退院センター入口に置きざりにされた事件等が発生した。
【2019(令和元)年】
刑法犯認知件数は、前年比で160件(7.1%)減少した。凶悪犯罪は14件発生したほか、なりすまし詐欺事件は、サイト利用料金を名目とした架空請求で約30回にわたり振り込み、電子マネー570万円を詐取された事件、80代男性が警察官を名乗る男からキャッシュカードを盗み取られ、800万円が引き出されるなどの事件が24件発生した。また、東京電力福島第一原子力発電所の事故による営業損害賠償金約2億800万円をだまし取ったとして韓国籍の会社社長ら3人が逮捕、その後、2013(平成25)年8月と2014(平成26)年5月の2回、同様の手口で総額6億円を超すとみられる事件で再逮捕される事件が発生した。
【2020(令和2)年】
凶悪事件は、逢瀬町の弟宅に放火した現住建造物等放火事件など8件発生した。なりすまし詐欺は、市内のコンビニエンスストアが電子マネーシステム業者を名乗る女からシステム不具合点検を名目に300万円を詐取された事件等、36件発生した。また、警視庁と福島県警察などの合同捜査本部は、約2,400億円の負債を抱えて倒産したジャパンライフが債務超過の事実を隠して資金をだまし取ったとして、元会長78歳ら14人を逮捕した。被害は44都道府県の高齢者ら延べ1万人から2,100億円、県内では郡山市を含めて約190億円に上ると見られる(『福島民報』2020年9月19日)事件が発生した。7月、しゃぶしゃぶ温野菜郡山新さくら通り店でガス爆発事故があり、改装工事中の男性1人が死亡、近隣住民ら多数が重軽症を負ったほか、住宅や店舗等の多数が損傷する事故も発生した。
【2021(令和3)年】
凶悪犯罪は、フィリピン国籍の32歳女性が安積町のアパートで殺害され交際相手の男が逮捕された事件、富田地内のアパートで80代女性を遺棄し、介護施設職員の男が逮捕された事件などが9件発生した。なりすまし詐欺は、90代男性が警察官を名乗る男からキャッシュカードを窃取された事件、70代女性が息子を名乗る男から500万円を詐取された事件など44件発生した。
b 暴力団情勢
福島県内の暴力団勢力は、2012(平成24)年1月1日現在で48組織、約1,100人であったが、2021年(令和3)12月末では37組織、約420人(38.2%)と減少した。暴力団対策法による指定暴力団の6代目山口組、住吉会、稲川会の主要3団体の勢力は全体の91.7%を占めている(公益財団法人福島県暴力追放運動推進センター『令和4年すくらむ』)。郡山市を含む県南方部の暴力団勢力は、県全体の31.4%を占める。暴力団の減少要因は、県・市民挙げての暴力排除活動や暴力団犯罪の取締りに伴う資金獲得活動の困難化等によるものと見られる。
郡山市に関連する暴力団員の主な事件は、2013(平成25)年11月から2014(平成26)年8月にかけて暴力団組員らが関与した広域自動車窃盗事件、2016(平成28)年10月、郡山市内に暴力団事務所を開設・運営した福島県暴力団排除条例違反事件、2021(令和3)年5月、建設機械窃盗事件で、郡山・白河市、新潟県の暴力団幹部ら3人が白河警察署に逮捕された事件などがある。
暴力排除活動では、郡山市が東日本大震災や東京電力福島第一原子力発電所事故災害での復興事業から暴力団等の介入を排除するため、2013(平成25)年7月12日、「郡山市除染業務等暴力団排除連絡協議会」を設置(除染事業が概ね完了した2022(令和4)年10月3日廃止)し、これら事業から暴力団の排除を徹底した。また、暴力団追放郡山市民大会を毎年開催して暴力団排除機運を醸成した。公益財団法人福島県暴力追放運動推進センターは、1992(平成4)年4月から県内では1ヵ所のみとなる福島県暴力追放運動推進センター郡山相談所を郡山市役所内に設置して暴力団に関する相談等に対処している。2012(平成24)年から2021(令和3)年までの暴力団に関する相談件数は、県全体で1万2,807件となり、特に東日本大震災以降、復興・再生事業関連会社及び金融機関等からの相談が大幅に増大した。