つぎに公共交通機関の動向については以下のとおりである。まず鉄道については、『資料編』(第4編・12-1-1)の10年間の郡山市内鉄道乗車人員総数の推移によると、東日本大震災後の2012(平成24)年度から2018(平成30)年度まで回復傾向にあり、750万人程度で推移していたが、新型コロナウイルスの影響により2019(令和元)年度から減少し、2020(令和2)年度には約260万人減少している。郡山駅乗車人員数も約240万人減少している。
このような鉄道利用者の減少に対応するために、郡山市では、過去に2度のパーソントリップ調査を実施しており、その中で新駅設置について検討してきた。そして2006(平成18)年度実施の第2回郡山都市圏パーソントリップ調査結果を基に、将来の都市像を見据えた「郡山都市圏総合都市交通計画」を2010(平成22)年1月に策定した。さらに2011(平成23)年6月に「郡山市総合都市交通戦略」を策定し、戦略的目標の「使いやすい公共交通体系づくり」の重点プロジェクトの一つとして新駅設置要望の多かった磐越西線郡山駅と喜久田駅間の新駅整備を位置づけた。そして2017(平成29)年4月1日に郡山市で88年ぶりの11番目の駅である郡山富田駅が開業した。総事業費は約18億8,000万円である。
郡山富田駅は、無人駅で、平屋の駅舎、跨線人道橋(南北自由通路)と約200台の駐輪場と乗用車乗降場所のロータリーと1台分のタクシー待機所を備えている。またエレベータが南北に1基ずつ設置してあり、バリアフリーに対応している。写真6は、郡山富田駅の改札口である。駅舎の三角屋根は安達太良山を、青いラインは安積疏水をイメージしているという。
この駅には駐車場がないが、これに対して、郡山市はパークアンドライドの導入を検討している。パークアンドライドとは、駅の近隣の駐車スペースに駐車(パーク)し、鉄道に乗りかえる(ライド)交通システムで、国内外の多くの都市で実際に導入されている。具体的には、近隣のホームセンター(カインズホーム)の協力を得て10台分の駐車スペースを確保し、JR定期券所有者を優先して募集を行い、2017(平成29)年3月から1年間条件を変えて社会実験を行った。その結果、前半の6ヵ月では定期的利用者を対象に通勤目的2名、習い事目的2名の計4名が参加し、利用回数が多い参加者は週3から4回、少ない参加者は月3回程度であった。後半の6ヵ月は駐車台数8台とし、定期的利用者に加え、買い物等不定期利用者にも拡大して、実験を行った。その結果、定期的利用者が3名、不定期利用者が5名という結果になった。以上の民間施設の駐車場を利用して行った実験結果より、一定の必要性が認められたため、その後、市有地を利用した実験を約3年間行った。その結果、登録者数は30名程度で、2020(令和2)年1月のある週の現地利用調査では延べ利用9台、1日あたり1~3台程度の利用状況であった。以上の実験結果を踏まえ、今後もパークアンドライド導入の可能性を模索することとしている。
次に使いやすい交通結節点の整備事業を二つ紹介する。一つ目の事業は、郡山駅東口である。郡山駅の東西自由通路の昇降施設は、階段のみであったので、高齢者や車椅子利用者にとっては非常に利用しづらい環境にあった。さらに、地域住民から、自由通路の防犯上の懸念が上がっていたことから、郡山市は、郡山駅東西自由通路を誰にでも快適で安全に利用できるように、2015(平成27)年12月に郡山駅東口整備事業に着手し、2017(平成29)年3月30日に開通した(『福島民報』2017年4月2日)。昇降施設にはエレベータ1基とエスカレータ2基を整備し、また通路には開放感のある大きな窓、自然採光の天窓やLED照明を取り入れるなど環境に配慮した。また、防犯カメラ、防犯ブザーの増設を行った。事業費は約8億7,000万円であった。郡山駅東口整備事業の整備効果については、郡山市の6月定例議会一般質問での郡山市の答弁で、事業着手前の2015(平成27)年9月16日に行った7時から19時までの東口利用者数が5,168人であったのに対し、開通後の2017(平成29)年4月24日の同じ12時間の調査結果が6,043人と約17%増加したとの報道があった(『福島民報』2017年6月23日)。同時に郡山市は自転車駐輪場の拡張にも取り組んでおり、これはサイクル(自転車から)アンドライド(鉄道に乗り換える)の推進に貢献できる。このように郡山駅東口の利用者が増加することにより、郡山市の東部地域の活性化につながることを期待する。写真7は郡山駅東口と東西自由通路の写真である。
二つ目の事業として、安積永盛駅西口広場改良事業について紹介する。安積永盛駅は、近くに大学、高校があることから、乗降客数が多く、郡山駅に次いで2番目の鉄道乗車人員があり、新型コロナウイルスによる影響をまだ受けていない2018(平成30)年度には約90万人の乗車人員であった(『資料編』第4編・12-1-1)。
安積永盛駅西口広場では、朝夕の通勤通学時、病院や各種学校への送迎車による混雑が発生し、周囲の道路に影響を及ぼしていた。そこで郡山市は、西口広場内に大型車と普通乗用車用の乗降場と待合場を新たに整備し、送迎車の導流化を図るとともに、不足していた駐輪場を駅への歩道橋下の空間に40台分整備し、2021(令和3)年1月8日に供用開始した(『福島民友』2021年1月12日)。写真8は安積永盛駅に続く歩道橋より撮影した安積永盛駅西口広場の全景である。
なお、安積永盛駅東口においても自転車駐輪場が不足していたため、郡山市は、既存の駐輪場に隣接する市有地に新たに240台分の駐輪場を増設し、併せて660台の駐輪場を2018(平成30)年3月20日から運用を開始している(『福島民友』2018年3月22日)。