【2021(令和3)年2月13日 福島県沖の地震】
【2022(令和4)年3月16日 福島県沖の地震】
東北地方太平洋沖地震からおよそ10年経過していたにもかかわらず、郡山市は2回の大きな揺れに襲われた。地震の諸元を表4に示す。いずれも福島県沖を震源とし、23時過ぎに震度6弱、5強というきわめて強い揺れであったが、社会活動の低調な時刻であったため、人的被害は小さかった。
| 2021(令和3)年 | 2022(令和4)年 | |
|---|---|---|
| 発生時刻 | 2月13日23時07分 | 3月16日23時36分 |
| マグニチュード | 7.3 | 7.4 |
| 震央 | 福島県沖深さ55km | 福島県沖深さ57km |
| 発震機構 | 逆断層型 | 逆断層型 |
| 最大震度 | 6強(相馬市など) | 6強(相馬市など) |
| 郡山市震度 | 震度6弱 | 震度5強 |
| (気象庁報道発表資料2022年3月17日) |
図4に2021(令和3)年の地震時に防災科学研究所強震観測網K-NETにより市内開成で観測された地震動を示す。最大加速度は513(cm/sec2)であった。図5に2回の地震の震央位置を示す。いずれも宮城県境に近い福島県沖でほぼ同じ位置、深さを震源としている。メカニズムは太平洋プレートと北米プレートの境界型ではなく、太平洋プレート内部の破壊によるスラブ内地震である。図6に2011年、2021年、2022年の3つの地震の加速度応答スペクトルを示す。これは地震動が建物の振動に与える影響を周期成分で現したものである。グラフのピーク値を比較すると2011年が最大で2021年がそれに次いでいる。周期では2011年は約0.3秒、2021年が0.6秒であり建物への影響は2021年の方が大きい。地震動の継続時間の長さが異なるために単純比較は難しいが、2021年の地震が侮れないものであったことが分かる。
表5に2回の地震による主な被害状況を示す。いずれの地震後も被害報告が多いものの、概ね軽微な被害が多かった。また、震度の小さい2022年で被害報告が増えているものもあるが、2021年以前の地震で潜在的な損傷が2022年で顕在化した被害も含まれている。
| 項目 | 人的被害(負傷者) | 断水(戸) | 市道等関連(件) | 農林部(施設) | 産業観光部(施設) | 庁舎(施設) | 小学校(校) | 中学校(校) | 義務教育学校(校) | スポーツ施設(施設) | 公民館・文化施設 | 市営住宅(棟) | 衛生施設(施設) | 子育て関連施設(施設) | 医療施設(施設) | 福祉施設(施設) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2021年 | 13 | 59 | 31 | 12 | 83 | 6 | 28 | 16 | 1 | 8 | 34 | 38 | 2 | 32 | 73 | 61 |
| 2022年 | 6 | 3 | 38 | 15 | 493 | 3 | 26 | 16 | 0 | 8 | 63 | 49 | 2 | 9 | 4 | 53 |
| (郡山市災害対策本部資料2023 年5月30日、2022年3月、2022年分は3月24日までのもの) |
2021(令和3)年の地震における、り災証明書の発行件数を表6に示す。全発行件数に対する大規模半壊以上の件数は1.3%、準半壊に至らない一部損壊は60.6%であった。また、2022(令和4)年の地震では、2021(令和3)年度中で319件であった。損壊家屋の公費解体は、2021(令和3)年度で249件、自己解体の負担金の償還が21件であった。
| 区分 | 居住者用 | 所有者用 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 全壊 | 15 | 79 | 94 |
| 大規模半壊 | 20 | 45 | 65 |
| 中規模半壊 | 102 | 92 | 194 |
| 半壊 | 1,034 | 381 | 1,415 |
| 準半壊 | 2426 | 748 | 3,174 |
| 準半壊に至らない(一部損壊) | 3,033 | 1,763 | 4,796 |
| 合計 | 6,630 | 3,108 | 9,738 |
| (郡山市事務報告書より集計、2022(令和4)年3月31日現在) |
避難所はどちらの地震でも開設され、2021年では2月16日から3月12日まで4ヵ所で29人を受け入れ、2022(令和4)年では3月16日から17日まで3ヵ所で19人を受け入れた。
先に示したように被害を受けた施設は多かったが、安全確認程度の休館が多くみられた。以下では被害が大きく、休館期間が長期となった施設について述べる。
労働福祉会館は一部の事務室で空調設備が落下したほか、大ホールの天井が落下した。そのため大ホール以外が2021(令和3)年2月22日まで、大ホールが5月31日までの休館となった。
市民文化センターは大ホール客席天井の一部落下および空調吹き出し口の落下、空調設備破損や漏水、壁面亀裂などがみられ、災害復旧工事のため2021(令和3)年2月14日から2022(令和4)年1月17日まで休館となった。さらに2022(令和4)年3月16日の地震のため、大・中ホールの舞台設備吊物レール、空調設備の落下などがあり3月17日以降が休館となった。
中央図書館は外壁の一部剥落、柱基礎損傷、鉄筋コンクリート内壁の一部損傷などにより休館となり、2021(令和3)年3月5日から12月26日までの間、中央公民館内に臨時窓口を開設し、図書の返却・貸出、新聞雑誌の閲覧を行った。損傷部分の災害復旧工事のため2021(令和3)年2月14日から2022(令和4)年1月7日までの休館となり、再開されたが2022(令和4)年の地震被害のため3月17日から再度休館となった。
開成山屋内水泳場は地下機械室の配管破損による漏水のため機械室が約3m浸水して機器が水没したほか、壁面に亀裂が生じて2021(令和3)年7月9まで休館となった。翌7月10日から東京オリンピックハンガリー代表が合宿で使用し、7月26日から一般開放が再開された。(『福島民報』<https://www.minpo.jp/news/ moredetail/2021070588147>2021年7月5日)
総合体育館は大体育館の天井配線ラックの一部分が落下するなどしたが、大規模な工事の必要がなかったため、長期の休館は免れて2021(令和3)年3月21日までの休館であった。2022(令和4)年では壁の損傷、照明設備の落下などのため7月18日まで休館となった。(『福島民報』<https://www.minpo.jp/news/moredetail/20220719 98913>2022年7月19日)
開成館を含む安積開拓に関する歴史的建築物は、漆喰外壁の亀裂・崩落、土壁内壁の亀裂・崩落、内部展示物の転倒・散乱などの被害が著しく、長期の休館となった。開成館以外の諸建物は2023(令和5)年10月1日より再開されているが、開成館については2028(令和10)年以降の再開予定である。(郡山市文化・学び振興公社『開成館ホームページ』<https://www.bunka-manabi.or.jp/ kaiseikan/>2024年2月15日)