避難所から応急仮設住宅、借り上げ住宅へと避難者の避難生活の場所が変わることで新たな課題が起こってきた。また避難者だけではなく、原発事故による放射線の影響は福島県民全体の問題として大きく生活に影響を及ぼしている。それは原発事故による被災の境界線が不明確(不明瞭)なことであり、国内における原発事故の前例もないことから、県民の中でも特に子どもたちにとっての「安心・安全」について、どのように考えるのかを突きつけられたことによる。郡山市から県内外へ避難(自主避難)する方々の大半は、原発事故による放射線の影響から避難を選択することになったと考えられる。この放射線については、特に子どもたちへの影響が大きな懸念でもあり、このことから派生する問題も様々であった。浜通り・中通りでは放射線量により、子どもたちへの被ばくの問題などから屋外での活動制限などもあり、市内では一定程度除染が進むまでは不安の中で生活を強いられている。また一例であるが、避難による家族の分断も問題となった。仕事がある夫は県内に残り、母親と子どもが県外へ避難することや高齢者が県内に残り、他の家族が避難するなどであった。このことに関連した、母子避難による避難先での孤立の問題も新聞等の報道で取り上げられている。
この時期の地域での支援やボランティア等の活動では子どもたちへの支援が多く見受けられる。例えば、郡山市では2011(平成23)年3月29日に郡山医師会等の関連団体と連携して「郡山市震災後子どもの心のケアプロジェクトチーム」を立ち上げ子どもたちへの心と体のケアに取り組んだ。このプロジェクトは2012(平成24)年8月11日に名称を「郡山市震災後子どものケアプロジェクトチーム」に変更するとともに組織体制の強化を図った(郡山市(2017)『東日本大震災-郡山市の記録-』)。
事業名 | 内容 | 実施時期等 |
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子どものメンタルヘルスケア 事業研修会 |
被災した子どもの メンタルヘルスケア |
平成23年 4・6月 |
元気なこおりやま・キッズフェスタ | 運動遊び、製作遊び、歌遊び、 和太鼓、昔遊び等の活動 |
平成23年 5・8月 |
ニューイヤーズフェスタ | 子どもたちのため、 お正月イベントとして音楽・アート・ 食のイベント等の開催 |
平成24年1月 |
震災後子どもの心のケアプロジェクト 1周年記念フォーラム |
講演会の開催 講師:柳田邦男氏、渡辺久子氏 |
平成24年3月 |
春のキッズフェスタ | 親子向けのイベント | 平成24年4月 |
夏のキッズフェスタ | 親子向けのイベントと 医師等による相談会を開催 |
平成24年8月 |
読み聞かせ研修会 | 講師:汐崎順子氏 読み聞かせボランティア |
平成24年10月 |
甲状腺を知ろう(溝演会) | 甲状腺についての講演会を開催 講師:百渓尚子氏 |
平成24年10月 |
読み聞かせ活動 | 読み聞かせグループによる 絵本等の統み聞かせ活動 |
震災直後から 現在まで継続 |
また、子どもたちの支援で、特に大きな役割を担い現在でも継続している活動が2011(平成23)年12月23日にオープンした東北でも最大級の屋内遊び場である「郡山市元気な遊びのひろば(PEP Kids Koriyama)」(施設管理者:郡山市、運営業務委託先:認定NPO法人郡山ペップ子育てネットワーク)の設置であった。この施設では小学生以下の子どもとその保護者を対象にしていて、2012年10月に入館累計30万人、2013年3月に40万人、2015(平成27)年3月に100万人を達成し、2018(平成30)年には入館者累計200万人となっている。
また、子どもたちへの支援として特徴的であったことは、先のペップキッズこおりやまの他にも屋内遊び場の設置であったり、子どもたちを対象とした県外での活動支援、民泊であったりと多岐にわたっている。子どもたちの支援について共通することは避難者を対象としたものではなく、郡山市内全域の子どもたちやその家族を対象としていることである。子育て支援や外遊びなどが制限されている子どもたちへの支援、子どもたちへの遊び道具の寄贈などと県内外あるいは国外から、また様々な団体や個人からの支援を含め多様な取り組みがされている。