東日本大震災以降、2013(平成25)年の災害対策基本法の改正に伴い避難所についての定義が示された。これに伴い郡山市における避難所設置についても改定が加えられている。
以下に『平成27年版防災白書』「第1部第1章第2節2-2 指定緊急避難場所
・指定避難所」より概要について一部抜粋したものを示す(『防災白書 平成27年版』内閣府)。
東日本大震災においては、切迫した災害の危険から逃れるための「避難場所」と、その後の避難生活を送るための「避難所」が必ずしも明確に区別されておらず、また、災害ごとに避難場所が指定されていなかったため、発災直後に避難場所に逃れたもののその施設に津波が襲来して多数の犠牲者が発生したなど、被害拡大の一因となった。このような教訓を踏まえ、2013(平成25)年6月の災害対策基本法の改正により、災害時における緊急の避難場所と、一定期間滞在して避難生活をする学校、公民館等の避難所と区別するため、新たに「指定緊急避難場所」及び「指定避難所」に関する規定が設けられている。
(1) 指定緊急避難場所
指定緊急避難場所とは、津波、洪水等による危険が切迫した状況において、住民等が緊急に避難する際の避難先として位置づけるものであり、住民等の生命の安全の確保を目的とするものである。
災害対策基本法では、市町村長は、防災施設の整備の状況、地形、地質そのほかの状況を総合的に勘案し、必要があると認めるときは、災害時の円滑かつ迅速な避難のための立退きの確保を図るため、一定の基準を満たす施設又は場所を、指定緊急避難場所として指定しなければならないものとされている。
(2) 指定避難所
指定避難所とは、災害の危険性があり避難した住民等を、災害の危険性がなくなるまで必要な期間滞在させ、または災害により家に戻れなくなった住民等を一時的に滞在させることを目的とした施設であり、市町村が指定するものである。
東日本大震災において、多数の被災者が長期にわたる避難所生活を余儀なくされる状況の中、被災者の心身の機能低下や様々な疾患の発生・悪化が見られたこと、多くの要配慮者が避難所のハード面の問題や他の避難者との関係等から自宅での生活を余儀なくされることも少なくなかったことなどが課題となった。
このような教訓を踏まえ、2013(平成25)年6月に災害対策基本法を一部改正し、災害の発生時における被災者の滞在先となるべき適切な施設の円滑な確保を図るため、同法第49条の7に市町村長による指定避難所の指定制度を、また指定避難所のうち、同法施行令第20条の6第1項第5号に福祉避難所の指定制度を設けるとともに、指定避難所における生活環境の整備等に関しては同法第86条の6及び7に、地方公共団体等が配慮すべき事項が規定された。また、災害対策基本法改正により新たに避難所における生活環境の整備等が規定されたことから、2013(平成25)年8月には、避難所における平常時の対応・発災後の対応として取組を進めるための参考として、「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」を策定し公表した。
郡山市における現在の避難所設置状況については、避難者が一定期間滞在するための施設である指定避難所252ヵ所(想定収容人数計53,108名)が設置されている(2021(令和3)年9月1日現在)。東日本大震災時の収容避難場所が192ヵ所であったので60ヵ所増えていることになる。避難者が一時的に避難するための場所である指定緊急避難場所は297ヵ所設置されている(2022(令和4)年5月1日現在)。また、新たに災害時において一般の避難所では生活に支障を来たす要配慮者(高齢者、障がい者、妊産婦、乳幼児、病弱者等)を対象に開設される福祉避難所は、市有施設が14ヵ所(収容人数計780名)、社会福祉法人等が37ヵ所(受入予定人数計660名)設置されている(2022(令和4)年4月1日現在)。さらに、新型コロナウイルス感染症等の感染症対策として、避難所の三密(密閉、密集、密接)を防ぐために車中避難・車両避難場所が指定されている。一般市民用(車中避難予定地)で公有地・公共施設等駐車場が13ヵ所(想定駐車台数計2,168台)、公園が14ヵ所(想定駐車台数計1,344台)、協定締結先民間駐車場が9ヵ所(駐車台数計3,230台)指定されていている。これらの合計想定駐車台数は6,742台となっている。他に事業者用(車両避難場所予定用地)として4ヵ所指定されていて想定駐車台数の合計は1,817台となっている。
これらのように、災害対策基本法の改正以降、福祉避難所が設置され、さらに、新型コロナウイルス感染症対策として車中避難・車両避難場所が指定されるなど新たな取り組みが行われてきている。