応急仮設住宅の規模等については、日本赤十字社が作成した「応急仮設住宅の設置に関するガイドライン(平成20年6月)」で基準を示している。 応急仮設住宅の規模以外にも、必要戸数の算定方法や入居者募集の方法等についても触れている。ガイドラインでは9坪(29.7平方メートル)を基準とし、単身世帯として6坪(19.8平方メートル)、その他多人数世帯向けに10坪(33.0平方メートル)程度の設置を提示している。日本赤十字社のガイドラインが数値のみで基準を示しているのに対して、プレハブ建築協会は、図4に示すような以下の3つの標準的な間取りで応急仮設住宅を供給しており、公募で建設された様々な応急仮設住宅も、基本的にはこの間取りを標準とした。
応急仮設住宅では、完成後に入居者の指摘や要望に応えて、様々な追加工事が実施された。大別すると「暑さ対策」「寒さ対策」「雨・雪対策」「バリアフリー対策」が挙げられる。
「暑さ対策」では、プレハブ造の軽量鉄骨製の柱等が、外部の熱をそのまま伝えてしまう熱橋(ヒートブリッジ)現象を発生させることから、外部に露出している鉄骨に断熱カバーを施工するなどした。また、南に面する窓に庇や植物によるグリーンカーテンを設置する等行った。窓前面にグリーンカーテンや植物を置くことについては、居住者が自ら積極的に行った事例が数多く確認でき、特に緑と合わせて花々が置かれたり生育されることで、応急仮設住宅団地の雰囲気が改善されることも確認できた。
「寒さ対策」では、プレハブ造の外部に面する壁に断熱を施す(内断熱による)など追加で施工が行われた。また、窓を二重サッシにするなど改善も行われた。細部では洋室床に畳を敷いたり、追い炊き給湯器の追加や暖房便座の追加等が行われ、また、エアコンの追加設置も行われた。「雨・雪対策」では、玄関に風除室の設置や窓庇の設置等が行われ、団地内では、通路の舗装や駐車場の舗装を行うことで、雨・雪に対処できるようにした。「バリアフリー対策」では、希望住戸に段差解消のためのスロープ設置を行い、また、掃き出し窓部分に濡れ縁の設置を行うなどした。
その他では、全住戸に物置を一台ずつ設置し、また、希望住戸には玄関チャイムを取り付ける等した。さらに住戸内の線量の高い住棟では、床下に放射線遮蔽のためのモルタル敷設を後から行った事例もあった。
以上のような居住者からの指摘や要望を受けて行政が行った対応に加え、居住者が自ら工夫して対策を講じたものも数多く確認できた。特に目立ったものには大型の庇やベランダ、物置や収納、自転車置き場、動物のためのスペース等があり、また、近所付き合いのためのベンチやテーブルなどもあった。なかには拡張のための増築スペースも見受けられた。このような居住者による生活のための様々な工夫は、今後の応急仮設住宅の在り方の参考になると考えられる。