貧困、紛争、気候変動、感染症などの課題から地球環境を守らなければならないという危機感を世界が共有し、2015(平成27)年に国連サミットにおいて2016(平成28)年から2030(令和12)年までの世界共通の目標である「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」が全会一致で採択され、“誰一人取り残されない”社会を実現しようとする決意が世界に発信された。本市は、2019(令和元)年に内閣府により本県で初めて「SDGs未来都市」に選定され、学校においても「環境教育」「人権教育」「多文化理解」などSDGsの17の目標に関連付けた学習を通しSDGsの理解を深める教育活動を展開することになった。「郡山市学校教育推進構想」の中で2021(令和3)年度から中心目標「SDGsを郡山の子どもたちから」を掲げ、「誰一人取り残されない」持続可能な社会の創り手を育成する教育の充実を図っている。本市は、長年「どの子も思う存分学べる学校づくり」を教育施策の中心に据え教育の機会均等、公平な教育環境づくりに努めてきた実績があり、その理念を発展的に展開することになったのである。
また、様々な災害を経験した本市は、2018(平成30)年に、けがや事故のない街を目指す「セーフコミュニティ」の国際認証を取得し、学校においても持続可能で安全・安心な環境づくりに取り組み始めた。
学校は、2012(平成24)年からの10年間に、東日本大震災、令和元年東日本台風による校舎への浸水、気候変動によると思われる猛暑や大雪への対応、さらに新型コロナ感染症への対応など、これまでに経験したことのない災害への対応に追われた。また、通学路における交通事故、SNSの普及による陰湿ないじめ、虐待なども大きな社会問題となり、より効果的な対応が学校に求められるようになった。
これらの問題への対策は、国においても法改正等を含め様々な形で整備されたが、前述のように、時を同じくして、様々な災害や困難な状況においても誰一人も取り残されない社会づくりが重要であるという理念が世界全体で広く認知されるようになり、災害や課題への予防的な対策、特に学校においては、児童生徒の危機回避能力や防災意識を高める教育に大きな関心が寄せられるようになった。具体的な動きとして、国は東日本大震災直後の2011(平成23)年7月に「東日本大震災を受けた防災教育・防災管理等に関する有識者会議」を設置し、その報告において、危険に際して自らの命を守り抜くための「主体的に行動する態度」の育成等、学校防災の方向性を示したのである。この主体性とは、学校のみならず家庭や社会生活において児童生徒が様々な形の危険を予測し、それを回避するための重要な資質・能力であり、2017(平成29)年告示の学習指導要領においても特に重視されている。
このように2012(平成24)年からの10年間は学校教育において防災教育・防災管理の充実、いじめや虐待、子どもの貧困等の児童生徒の安全・安心に係る対応が強く求められた時期でもあり、法令等の整備と併せ、本市では「郡山市学校教育推進構想」に具体的な目標や対策を示し、持続可能で安全・安心な学校づくりに努めたのである。