3 予測困難な時代の教育創成へ向けて

 2012(平成24)年から災害対策に追われ続けた10年間であったが、一方では予想を超える勢いで社会や技術の変革が進み、教育の質や内容、方法が問われ続けた10年間でもあった。記憶した知識や情報が瞬時に更新を余儀なくされる時代が到来し、「どれだけ覚えたか」ではなく「何をどう学ぶか」「何ができるようになるか」が問われ、学校教育が目指す方向性として2017(平成29)年告示の学習指導要領で明確に示された。そのような中、2020(令和2)年1月から日本においても猛威を振るい始めた新型コロナ感染症の流行により、多くの学校が長期の臨時休業を余儀なくされた。まさに予測困難な事態に直面したわけであるが、児童生徒の学習の保障が大きな課題となり、タブレット等の情報端末を利用したオンライン学習や、教材を配付するためのクラウド利用が積極的に試みられた。これらの状況を踏まえ、国は、タブレット1人1台端末と高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備するGIGAスクール構想の前倒しを決定し、授業等におけるデジタル活用が加速することになった。本市では、全国的にも早い段階からICT機器の整備を進め独自のイントラネットを構築するとともに、授業での活用法や機器のトラブルへの対処法などを助言する専任職員を配置してきた実績があり、これらの動きに対して大きな混乱やトラブルもなく、適切かつ迅速に対応できたのである。

 また中央教育審議会は2021(令和3)年1月の答申で、教育振興基本計画の理念である自立・協働・創造の継承、学校における働き方改革の推進、GIGAスクール構想の実現、新学習指導要領の着実な実施などの必要な改革を躊躇なく進めることで、従来の日本型学校教育を発展させ、「令和の日本型学校教育」を実現するという方針を示した。さらに、その具体的な進め方等、教育進化のための改革方針を示す「教育進化のための改革ビジョン」が、2022(令和4)年2月に公表された。

 このように、2012(平成24)年からの10年間は、目まぐるしく変化する状況への学校や教育委員会の対応力が問われたといっても過言ではない。本市は、時代の要請や新しい教育への対応において常に積極的な施策を展開してきた。前述のICT整備の他に例を挙げれば、小中一貫・連携教育の推進、教科としてのプログラミング学習や小学校1年生からの英語教育、本県初となる義務教育学校の開校、給与型の奨学金制度の拡充、学区の弾力的運用、市立学校全校へのコミュニティスクールの導入、専門指導員による特別支援教育の充実、保健福祉関係部署と一体となった家庭教育への支援体制の充実、幼・保・小連携事業の充実、独自に設置する教育研修センターにおける教員研修の充実、弁護士会との連携によるいじめ法律相談ホットラインや学校法律相談窓口の開設など、時代の要請や教育課題に積極的に対応する先導的な施策の展開が特筆される。

 このように、新しい教育の在り方も含め、今後の予測困難な時代への対応については、本市のこれまでの主体的な教育実践の蓄積と、市民や行政に脈々と引き継がれているフロンティア精神が大きな力となり、常に将来を見据え持続的で誰一人取り残されない教育の実現に向けた様々な施策が展開されてきたのである。

(堀田 隆)