(4) 持続可能な安全安心な学校づくりのために

a 校地内歩車分離と通学路合同点検

 2012(平成24)年7月5日に郡山市立小学校の校地内で保護者の車による児童の交通死亡事故が発生した。各小中学校においては、児童生徒の登下校の動線と教職員・保護者・業者等の車両の動線を完全に分離する校地内歩車分離の対策を早急に行った。この事故の教訓を風化することなく児童生徒の安全確保と交通安全の意識を高める目的で、7月5日を「校地内交通安全の日」とし、現在に至っている。同年度より通学路交通安全プログラムに基づいた合同点検と対策会議を開始し、国・県・市の道路管理者、警察、教育委員会、学校、PTA、地域の自治連合会、交通安全関係団体等が連携し、通学路の安全点検と交通事故の防止に努めた。この間、郡山市は2018(平成30)年に福島県内で初めてのセーフコミュニティ国際認証都市となり、この施策はセーフコミュニティの視点からも重要なものとなり、2021(令和3)年度までの合同点検は700ヵ所を超えた。


b 郡山市いじめ防止基本方針に基づく対応と道徳教育の充実

 いじめ問題が大きな社会問題となり、「いじめ防止対策推進法」が2013(平成25)年6月28日に成立し、同年9月28日に施行された。

 同推進法第2条のいじめの定義には、インターネットを通して行われるものを含むことが明記された。2013(平成25)年10月11日に推進法の規定を運用するために策定された「いじめの防止等のための基本的な方針」は、2017(平成29)年3月14日に改定され、いじめの重大事態の調査に関するガイドラインが策定されるなどの見直しがなされた。

 本市においては、2014(平成26)年4月に「郡山市いじめ防止基本方針~『どの子も思う存分学べる学校づくり』を目指して~」を策定し、市の責務、学校の責務、保護者の責務を、児童生徒の役割、地域・関係機関の役割をそれぞれ明記した。各学校では、同推進法第13条に基づき、「学校いじめ防止基本方針」を作成し、いじめはどの子どもにも、どの学校でも起こり得るものであり、重大な人権侵害であり、「いじめは絶対に許さない」という強い信念のもとに、学校、教職員の責務として、関係機関との関連を図りつつ、学校全体でいじめ防止及び早期発見に取り組み、いじめに適切かつ迅速に対処する体制づくりに努めた。2018(平成30)年3月26日制定、同年4月1日施行の「郡山市こども条例」や2019(令和元)年7月1日「SDGs未来都市」選定は、いじめ防止の各施策に密接に関連するものとなった。「いじめ防止指導用リーフレット」「児童生徒の自殺予防リーフレット~教師用~」の作成、弁護士会と連携したいじめ問題にかかる電話による法律相談窓口の開設(2016(平成28)年度)、学校法律相談(2019(令和元)年度)等の施策が行われた。各学校においては、「特別の教科 道徳(小学校は2018(平成30)年度、中学校は2019(令和元)年度)に導入」の授業の質的改善と充実を図り、道徳教育全体計画と別葉の活用に努めるとともに、インターネットを通したいじめ防止のための情報モラル教育を推進した。


c 個性を生かす部活動指導の充実

 全国的に部活動指導者による体罰が顕在化し大きな教育問題となった。2016(平成28)年度から、市内小・中学校の部活動指導者を対象に、大学の陸上部監督や合奏・合唱の音楽指導の有識者等を講師に招へいし、子どもに寄り添い、勝利至上主義にならない個性を伸ばす部活動指導を充実させるための「部活動指導者スキルアップ研修会」を開催した。この研修会を部活動での体罰防止の施策の一つとした。


d 気候変動対応型防災教育の充実

 2019(令和元)年10月、令和元年東日本台風(令和元年台風19号)に伴う豪雨により本市でも甚大な被害が発生し、特に赤木小学校、永盛小学校、小泉小学校は床上浸水等により校舎が長期間にわたって使用不可能になった。本市においては、東日本大震災での経験を生かし、児童の安心・安全と学習活動の再開を最優先課題とし、「子どもの学びを止めない」を合い言葉に、迅速な授業再開に総力を結集した。その結果、臨時休業日数わずか5日間で、赤木小学校5,6年生は進学先である郡山第五中学校、3,4年生は桃見台小学校、1,2年生は金透小学校、特別支援学級は芳山小学校、永盛小学校6年生は進学先である小原田中学校、5年生と特別支援学級は安積第三小学校、3,4年生は小原田小学校、1,2年生は緑ケ丘第一小学校、小泉小学校は進学先である明健小中学校で、それぞれ授業を再開することができた。全てバス輸送による登下校であった。

 校舎の復旧には大変な困難を要したが、卒業式を自校で迎えさせることを目標に、オール郡山で復旧作業に取り組んだ結果、比較的被害の小さかった小泉小学校は同年12月2日、赤木小学校は12月23日、永盛小学校は3~6年生と特別支援学級が12月23日、1,2年生が2020(令和2)年2月17日に、無事自校で授業再開を迎えることができた。

 これまで経験したことのない気候変動に伴う自然災害の理解、ハザードマップを活用した水害を想定した避難訓練、災害を含めた危機管理の家庭・地域との情報共有等、防災・減災教育の推進が一層重要となった。


e 危機管理能力を高めるための安全教育の充実

 正体不明の新型コロナウイルス感染症が日本国内でも蔓延の兆しが見られたことから、国の方針に則り、本市においても2020(令和2)年3月2日から3月23日まで市立全小・中・義務教育学校で臨時休業措置が取られた。本市においては、郡山保健所の監修のもと作成した本市独自の「郡山市立学校新型コロナウイルス対策 対応マニュアル(第1版)」を、3月27日の臨時学校長会議で校長に周知し、新年度の学校再開に備えた。その後も、同年4月21日から5月24日まで2回目の臨時休業措置が取られた。さらに、2021(令和3)年度は、修学旅行などの学校行事の規模縮小、中体連各種大会や文化関係コンクールなどの開催自粛など、生徒の貴重な体験や学びの場の縮小を余儀なくされた。

 各学校においては、「学校の新しい生活様式」「新型コロナウイルス対策対応マニュアル」に基づく感染症対策として、感染のリスクの高い学習活動の中止、ICT(タブレット)活用したソーシャルディスタンスを確保した学習、「三密回避」「毎朝の検温」「風邪症状の有無の確認」「手洗い・手指消毒」「換気」「黙食」を徹底した。同時に、危機管理能力を高めるための安全教育の充実が求められた。