(2) この10年を振り返って

 大きな出来事としては、前半は2011(平成23)年の3.11東日本大震災への対応があり、後半には、日本では2020(令和2)年1月15日に初めて感染が確認された新型コロナウイルス感染対応がある。学校にとっては、安全対策と健康対策に明け暮れた10年であったといえる。

 まず、2011(平成23)年3.11東日本大震災では、市内の各高校とも大小の被害を受け、幸い負傷者等は発生しなかったものの、県立では安積黎明高校と郡山東高校が、私立では帝京安積高校が、教室棟が使えなくなるほどの大被害を受けたことが、10年前の市史にも記されている。その中でも安積黎明高校の北校舎改築工事の完成は2014(平成26)年2月まで待たねばならず、長期にわたって仮設校舎を使用する状況があった。同史によれば、市内の高校の始業式や入学式は、各学校の事情に応じて行われ、日程に10日前後の違いが生じたとされている。なお、この時期、生徒の交通手段の確保のため、列車不通区間には市内旅行代理店及びバス運行会社が共同で、高校生の通学専用バスを走らせたことは、地域が自らの学校と生徒たちを護る意識を持って活動した事実である。永く記憶に留めるとともに、地域が学校を支える貴重なファクターであることを認識し、常に連携と協働に努めるべきであることを示唆している。また、東京電力福島第一原子力発電所の事故による放射能汚染への対策として、表土改善工事をはじめとする放射線量低減工事も各校で実施され、郡山東高校や安積高校では2011(平成23)年7月に、安積黎明高校では2011(平成23)年8月に、郡山商業高校でも2012(平成24)年3月末には完了したことが、各校の要覧から確認できる。若い世代を護るべく、素早い対応がなされたことが伺える。

 続いて取り上げるのは、新型コロナウイルス感染予防対策である。故安倍晋三首相は2020(令和2)年2月27日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、全国すべての小中高校と特別支援学校について、3月2日から春休みに入るまで臨時休校するよう要請した。法的根拠はないが、感染者の増加を踏まえ要請に踏み切ったものであった。福島県教育委員会の鈴木淳一教育長は、臨時休業となってから10日後の3月12日に「学校の臨時休業に関する福島県教育長メッセージ」を出し、急な休業が感染拡大防止のためにはやむをえないことであったこと、休業までの期間が短かったにも関わらず、無事休業に入ることができたことについて、保護者、教職員、その他地域の関係者への感謝をしていること、休業の間の子どもに向けた生活上の注意や励ましが伝えられ、さらには新型コロナウイルスに関連したいじめや差別への戒め等がなされた。続いて、同年5月1日には、学校における新型コロナウイルス感染症の対策に関する懇談会によって「新型コロナウイルス感染症対策の現状を踏まえた学校教育活動に関する提言」が示され、その中で「社会全体が、長期間にわたりこの新たなウイルスとともに生きていかなければならないという認識に」立つことが打ち出された。同提言は学校教育活動に関しても三密を避けながらの学校教育活動の再開等、学校で学ぶことができる環境を作ることを求めており、以後、こまめな手洗い、消毒、マスク着用、感染リスクの高い学習方法の回避等、「高等学校等についても、学科の教育内容や生徒の通学等の状況を踏まえ、小・中学校等と同様の取組を進めていくこと」とされ、郡山市内においても、それが学校における日常の風景となっていった。

 次に各高校におけるこの10年間の主な変遷である。

 安積高校は、2002(平成14)年5月~2006(平成18)年3月の間、スーパーサイエンスハイスクール指定を受けていたが、2018(平成30)年3月に再びスーパーサイエンスハイスクール第2期指定を受けた。安積高校御舘校は2021(令和3)年度3月に、最後の3年生10名を卒業させ、74年の歴史に幕を閉じた。安積黎明高校は、2018(平成30)年に生徒定員を普通科920名に、続いて2019(令和元)年には定員880名、さらには2020(令和2)年には定員840名へと、連続して定員を改定した。同じく郡山東高校も生徒数は縮小しており、2013(平成25)年に普通科7学級に、続いて2021(令和3)年には普通科6学級になった。郡山商業高校は、2013(平成25)年に国際経済科を募集停止にする一方で、流通経済科を1学級増にした。郡山高校は、2013(平成25)年に普通科6学級、英語科1学級に、続いて2021(令和3)年に普通科5学級、英語科1学級に学則改正した。湖南高校は、2018(平成30)年に1学級本校化により普通科40名となった。

 私立高校の郡山女子大学附属高校では、2011(平成23)年に普通科2年次より3コース制(文系・理系・スポーツ系)となり、2013(平成25)年からは2コース制(Ⅰ型(文系)・Ⅱ型(理系))になった。日本大学東北高校は、2020(令和2)年度から新校舎の運用を開始した。帝京安積高校では、2013(平成25)年に東日本大震災復旧工事を完成させた。尚志高校では、2013(平成25)年に新校舎が落成した。