(1) 国の動向

 2007(平成19)年に始まった特別支援教育は着実に発展し教育現場に定着してきたが、一方で、2006(平成18)年に国連総会で採択された「障害者の権利に関する条約(障害者権利条約)」を批准するために急ピッチな法整備と制度改革がなされ、さまざまな対応が行われた。2012(平成24)年7月、中央教育審議会初等中等教育分科会は「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」を発出し、その後の教育改革の筋道を示した。この方針に従い、2013(平成25)年には合理的配慮の公的機関における義務条項を定めた「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」が制定され、さらに就学制度も改正された。こうした努力の積み重ねが功を奏し、2014(平成26)年1月、日本は障害者の権利に関する条約を批准した。

 教育の内容については、文部科学省は学習指導要領改訂のスケジュールと並行して、大学等の教職課程の履修内容の全面的な見直しを実施した。この改訂により2019(平成31)年4月の入学生より、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、栄養教諭、養護教諭の教職課程において初めて特別支援教育が必修科目となった。その教授するべき内容項目としては、2018(平成30)年に高等学校でも開始された「通級による指導」や障がいによる学習上又は生活上の困難を克服する教育である「自立活動」、たんの吸引や経管栄養などの医療行為について研修を受けた教員等が行う「医療的ケア」、障がいカテゴリーによらずに子どもの学習上の困難に対応する「特別な教育的ニーズ」などが盛り込まれた。