(2) 県の動向

 福島県は「『地域で共に学び、共に生きる教育』の推進」を基本理念として特別支援教育を進めている。県内の特別支援学校は、特別支援教育の開始以後も「養護学校」の名称を使用していたが、2017(平成29)年4月より県内一斉に「支援学校」に変更された。郡山市内においては、聴覚障がい教育を担う「聾学校」が「聴覚支援学校」に、肢体不自由教育の「郡山養護学校」が「郡山支援学校」に、知的障がい教育の「あぶくま養護学校」が「あぶくま支援学校」に、病弱教育を担う「須賀川養護学校郡山校」が「須賀川支援学校郡山分校」となった。本項目では記述される年代によって両方の呼称が使用されることをご了承いただきたい。

 県内の幼児児童生徒数は減少を続けているが、その一方で、特別な支援を必要とする児童生徒数は増加している。2007(平成19)年以降、知的障がい特別支援学校の教育環境改善の声が高まったことから、県は2013(平成25)年3月に「福島県県立特別支援学校全体整備計画」、2015(平成27)年3月に「県立特別支援学校整備指針」、2017(平成29)年12月に「第二次福島県県立特別支援学校全体整備計画」(以下、「全体整備計画」という。)を策定し、整備を進めた。

 この整備に関する郡山市内のトピックのひとつは、県中地区の大規模校であるあぶくま養護学校である。それまでも児童生徒数の増加や長時間通学による負担が指摘されていたが、あぶくま養護学校安積分校が施設の老朽化により2016(平成28)年度末で閉鎖されることが決まった。これにより、さらなる児童生徒数の増加が見込まれたため、2017(平成29)年4月より県中地区に新たな学校(たむら支援学校、石川支援学校たまかわ校)を設置することとなった。もうひとつのトピックは、聴覚支援学校寄宿舎の改築である。1960(昭和35)年に建築され老朽化が著しかった寄宿舎を2020(令和2)年12月に改築した。改築に当たっては非常用の設備や聴覚障がいの特性を考慮した情報保障(注1)の設備など、児童生徒の安全・安心な生活環境を整えた。

 県は「全体整備計画」に基づき、2021(令和3)年度までに特別支援学校1校と分校2校を設置したが、今後も東日本大震災のために移転を余儀なくされていた富岡支援学校の双葉地区での再開の他に特別支援学校3校の新設を予定している。このうち2025(令和7)年度に安達地区において開校予定の特別支援学校は現在あぶくま支援学校に通学している二本松市、本宮市の児童生徒に加え、郡山市北西部に在住する児童生徒も受け入れることになり、通学時間の軽減が期待でき、あぶくま支援学校の児童生徒数の減少も見込まれている。

(注1 情報保障とは、手話や文字などを利用して周囲の音情報をきこえない人に伝えたり、逆に手話や文字などを利用して発せられた発言を音声に変えるなどして、その場にいるすべての人々の「場」への対等な参加を保障する取り組み)