(4) 先人たちの逝去と転換期を迎えた美術館

 2022(令和4)年に開館30周年となる美術館の源は、1970年代の市民による美術館建設運動にある。その時代を含め、建設準備室時代(1987~1992年)及び開館直後の数年間に貢献した人々の多くがこの10年の間に相次いで逝去されたことは、美術館の運営に関して大きな転換期を迎えつつある時期と機を一にしている。

 郡山出身の彫刻家・三木宗策を父に持ち、国立館の館長などの経歴から専門家として各種委員を務めた三木多聞(2018年没)、建設運動をリードした郡山在住の画家・佐藤昭一(2018年没)、設計後に日本芸術院会員に推挙された設計者の柳沢孝彦(2017年没)、そして収蔵方針の作成など今日の美術館の基礎を築き、準備室長から初代館長となった村田哲朗(2020年没)、そのほかにも建設運動や美術館友の会の設立などをとおして40有余年にわたり美術館を支えてくれた人々が、この10年の間に少なからず逝去されている。

 その一方、AIやデジタル技術の発達、そしてコロナ禍によるリモート式の導入などもあり、新たな鑑賞方法や事業形態が登場してきた10年でもあった。

 郡山市立美術館は地域の教育機関として、また広域連携都市圏唯一の本格的公立美術館として、創成期から変わらない基本姿勢と新たに対応を迫られるものとをバランスよく取り入れた活動が課題となってきている。

(鈴木 誠一)