<歴史資料館の歩みと(仮称)歴史情報・公文書館>
当資料館は、1958(昭和33年)4月「福島縣立図書館郡山分館」を併設することで新築落成した「郡山市図書館」の施設を使用してきた。図書館落成の年11月には、三笠宮崇仁親王殿下のご来館の栄誉に浴した。
図書館法により、図書館には書籍を扱う他に郷土史料や地方行政資料の収集・郷土誌編さん等の役目も担うため、1982(昭和57)年3月中央図書館新設に伴う図書館の移転により歴史資料館として改装し、同年4月10日「郡山市図書館付属歴史資料館」として開館した。(1階の一部は(財)郡山市埋蔵文化財発掘調査事業団に貸室)図書館付属での開館は図書館新築の際、3階部分の建築費を県が負担し、前記したように県立図書館の分館として併設開館したためである。県との財産譲与契約により、2001(平成13)年4月1日ようやく歴史資料館として独立した。
図書館は、戦前に編さんされた「郡山市誌稿」数千枚の資料を市学務課より引き継いだ。この時、本格的な編さんは不発に終わったが、1959(昭和34)年、当時の秀瀬市長より市史編さん事業の復活・推進が提案され、教育委員会・図書館・社会教育課・地方史研究会が協力し、1963(昭和38)年4月から約2年間かけて最初の郷土誌「郡山の歴史」を発刊(昭和40年1月1日)した。1966(昭和41)年10月、市は明治百年を記念し、本格的な「郡山市史」編さん事業に着手。教育委員会に市史編集室を設置して、1975(昭和50)年3月に「郡山市史」全11巻の編さんを完了させた。(郡山市中央図書館(1994)『郡山市図書館開館50周年記念誌』)
図書館付属時代から歴史資料館は、市民に当市の歴史を知ってもらうために歴史史料を公開・展示し、併せて、調査・研究・学習のための資料閲覧サービスを行ってきた。館内2階は常設展示として、市内遺跡出土の石器や土器、銀作太刀(しろがねつくりのたち)、郡衙(ぐんが)跡の清水台古遺跡出土の瓦、江戸時期の古文書等を展示してきた。3階は民俗資料、戦争関連の展示の他、年度ごとにテーマを変えて企画展を開催してきた。所蔵している史料は、二本松藩の郡山上町名主今泉家、守山藩御用留帳など約7万点を有しており、目録は38集まで刊行してきた。主な業務として、所蔵資料の整理・保存、収蔵資料目録作成・発行、郷土誌製本、史料の修復等を行っている。事業としては、年2回の「市民史跡文化財めぐり」、年3期の「古文書教室」、学芸員による市民出前講座、小中学校への出前講座、学芸員養成の博物館実習などを提供してきた。
当館は、2011(平成23)年3月の東日本大震災と2度の福島県沖地震(2021(令和3)年2月震度6弱、翌年3月震度5強)を経験している。地震の被害については、収蔵資料の散乱や展示物の落下・破損はあったが、幸いにも人的被害や建物への甚大な損害はなく、その都度、復旧・修繕に努めてきた。また、本館は新型コロナウイルス感染拡大に伴い発令された「緊急事態宣言」により2020(令和2)年4月18日から約1ヵ月間、県の「まん延防止等重点措置」適用により翌年8月から1ヵ月間、それぞれ臨時休館している。
前記したように当館は、1958(昭和33)年に新築落成した図書館の建物を使用、資料館として独立した施設となっても改装工事を行い継続使用してきた。そのため築66年が経過しており施設の老朽化に加え、相次ぐ震災により市内旧家等の建物が被害を受けたことによる貴重な古文書等の史料消失・散逸が課題となっている。2014(平成26)年初旬に郡山の歴史愛好家・市民団体(安積歴史塾・郡山地方史研究会)から「市内の歴史資料を保存、調査研究、展示できる総合的な歴史資料館建設」の要望が市に提出された。(『福島民友』2014年2月3日)市当局は同年12月より「郡山市歴史資料保存整備検討委員会」を開催し、歴史資料の保存・課題及び対策について検討を重ねてきた。その結果、博物館法に基づいて市内の文化施設等と連携し「歴史・情報のハブ」拠点としての役割を担う博物館とするため、歴史資料の展示に合わせて、デジタルコンテンツ及びアーカイブシステム整備を目指し「歴史情報博物館整備事業」(2021(令和3)年度は「(仮称)歴史情報・公文書館施設整備事業」)を展開している。具体的には、新博物館は「郡山市歴史情報博物館」として中央図書館西側駐車場跡地に2024(令和6)年8月末竣工、開館は同年度末の予定で事業が進められている。歴史資料館は、2024(令和6年)1月、中央図書館に仮事務所を設け一時移転し、一部業務を継続しながら新館開館準備にあたる計画となる。当館施設は、2024(令和6年)4月に解体し、跡地は公会堂前広場として整備を検討する。
当館は、施設としては66年間、図書館付属歴史資料館時代からは41年間の歴史に幕を閉じる。
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