<2012(平成24)年度~2021(令和3)年度>
大安場史跡公園は、全長約83mの東北地方最大の前方後方墳・大安場1号墳および出土資料を展示するガイダンス施設からなる史跡公園である。古墳は1991(平成3)年に発見され、1994(平成6)年から測量調査が実施された。発掘調査は、1996(平成8)年の第1次発掘調査から2004(平成16)年の第6次発掘調査まで行われた。2000(平成12)年には国史跡の指定を受けた。その際、「福島県中通り地方にある全長約83mの東北地方最大の前方後方墳。古墳時代前期後半の築造と考えられ、長大な木棺に腕輪形石製品や武器・農工具を副葬する。東北地方南部を代表する古墳であり、下野・那須地方との関連もうかがえ、東北地方の古墳時代の政治・社会と、東北地方への古墳文化の波及を考える上で重要である。」との意義が与えられた。そして、公園整備・ガイダンス施設建設・古墳復元が行われ、2009(平成21)年4月4日に全面オープンした。
大安場史跡公園の管理・運営は2009(平成21)年4月1日から5年間、財団(現公益財団)法人郡山市文化・学び振興公社が指定管理者として担ってきた。そして2014(平成26)年度からの5年間、さらに2019(令和元)年度からの5年間についても引き続き郡山市から指定を受けている。
古墳やガイダンス施設展示室での案内・解説、体験学習室で勾玉作りなどの体験メニューを実施し、郡山市内外から来館者が訪れている。
大安場史跡公園の周知と理解を目的とした業務の一環として、企画展・身近な遺跡の展示会、外部講師を招いた講演会を実施している。これまでに古墳時代を中心とした多彩な企画展や身近な遺跡の展示、著名な研究者を招へいしての講演会を開催した。
2011(平成23)年3月11日に東北地方太平洋岸を襲った東日本大震災により、大安場1号墳(前方後方墳)の墳頂部と法面に亀裂が生じた。そのため、古墳墳丘は立ち入り禁止とし、2013(平成25)年度に復旧工事に着手した。同年7月末に修復を完了し、8月からは一般公開を再開した。
2012(平成24)年度は、開館以来の入場者数が20万人を超え、5月6日に記念セレモニーを開催した。夏休みには、特別企画「自由研究を始めよう」を行った。10月に田村町の正直27号墳で出土した頭蓋骨から復顔した模型の一般公開を行った。また12月には、2009(平成21)年にイギリス大英博物館で展示された田村町の荒小路遺跡から出土した土偶を展示した。本年度の入館者数は36,669人を数えた。
企画展「よみがえった正直古墳の主~市内田村町正直地区の遺跡」(10月18日~12月9日、4,628人)を開催し、企画展記念講演会「語り出した古墳の主―正直27号墳出土人骨の復顔によせて―」(馬場悠男 国立科学博物館名誉研究員 11月25日)を開催した。また、歴史講演会「孤高の大型前方後方墳―大安場古墳から考える郡山市の古墳時代―」(藤沢敦 東北大学埋蔵文化財調査室特任准教授 3月3日)を開催した。
2013(平成25)年度は、先に述べたように東日本大震災の影響による損傷の修復を終え、8月に2年5ヵ月ぶりに古墳の一般公開を開始した。7月には大安場古墳の特徴を研究する児童向けの講座を実施した。本年度の入館者数は44,208人を数えた。
企画展「古墳時代 お宅訪問!」(4月20日~7月12日、14,146人)を開催し、企画展記念講演会「古墳時代の暮らし」(菊地芳朗 福島大学教授 6月9日)を実施した。この企画展では、実物大の竪穴建物を再現した。「ダンボールアートDE夏休み」(7月20日~8月25日、10,230人)を行った。また、企画展「古社名刹 田村神社の歴史展」(10月26日~12月1日、4,861人)、歴史講演会「大安場古墳と東北の古墳文化」(伊藤玄三 法政大学名誉教授 12月7日)を開催した。
2014(平成26)年度は、開館以来の入場者数が30万人を超え、8月23日に記念セレモニーを開催した。5月には「こどもオリンピック」を開催した。7月には藍の生葉を使用した「草木染め」を実施した。本年度の入館者数は、44,513人を数えた。
企画展「ふくしま埴輪物語」(7月12日~8月31日、10,782人)を実施するとともに、企画展記念講演会「東と西の人物埴輪―福島県の埴輪をもとにして―」(日高慎 東京学芸大学准教授 7月13日)を開催した。また、企画展「田村町御代田甚日寺 両界曼荼羅と密教世界」(11月1日~12月14日、4,562人)、歴史講演会「大安場古墳が造られた時代―古墳時代前期の東北地方と畿内―」(石野博信 兵庫県立考古博物館館長 3月15日)を開催した。
2015(平成27)年度は、大安場古墳の発見から25周年の節目となる年であった。5月に3日間にわたる「こどもオリンピック」を行い、秋には「古墳まつり」を実施し、勾玉作りをはじめとする多彩なイベントを行った。1月には市民参加型事業「和紙の凧をあげよう」を開催した。本年度の入館者数は、44,239人を数えた。
企画展「縄文の風景―ハート形土偶の生まれた時代―」(7月11日~8月30日、7,544人)を実施するとともに、企画展記念講演会「縄文世界の謎を解く」(渡辺誠 名古屋大学名誉教授 7月19日・20日)を開催した。また、企画展「大安場古墳の世界」(10月31日~12月13日、3,981人)は古墳発見25周年を記念しての企画展で、大安場古墳と同時期の古墳時代前期の遺物を多数展示した。また歴史講演会「始祖墓と大安場古墳」(土生田純之 専修大学教授 3月20日)を開催した。
2016(平成28)年度は、5月に「こどもオリンピック」を行い、やり投げ・古墳作り・古墳でゴルフなどの競技を実施した。また、同月に発掘体験や古代米の田植え体験、8月には「自分だけの虫かご作り」など親子向けの事業を開催した。史跡公園の案内キャラクターの愛称を募集し、11月に「大安場くん」に決定した。2017(平成29)年2月に「子どもの遊び場」がオープンした。本年度の入館者数は、51,300人を数えた。
企画展「宇津峰合戦」(7月9日~8月28日、9,020人)を実施するとともに、企画展記念講演会「東北の南北朝動乱―福島県・宮城県における動向を中心に―」(七海雅人 東北学院大学教授 7月18日)を開催した。また、企画展「古墳時代“黄泉の国”の考古学」(10月29日~12月11日、4,487人)、歴史講演会「考古学からみたヒメ・ヒコ制(聖俗二重首長制)をめぐって」(白石太一郎 国立歴史民俗博物館名誉館長 10月8日)を開催した。
2017(平成29)年度は、3月に市民参加型事業「歴史ウォーク 芭蕉の道を歩く」、5月に「こどもオリンピック」を行い、6・1月には平安時代のお菓子のレシピを再現した「グルメ体験」を行った。7・10月に実施した「古墳まつり」では、火おこしや勾玉作り・埴輪作りが人気を博した。また、8月には「竹細工体験」、12月には「紙すき体験」を行った。本年度の入館者数は、52,637人を数えた。
企画展では、中田町の遺跡・遺物を紹介する「中田町の歴史展」(4月15日~5月28日、11,383人)を行った。また、企画展「腕輪の考古学」(7月8日~8月27日、9,970人)を実施するとともに、企画展記念講演会「大和王権と腕輪」(北條芳隆 東海大学教授 7月17日)を開催した。企画展「遺跡と災害」(10月28日~12月10日、4,234人)、歴史講演会「古墳時代の関東と東北地方南部―群馬と福島の関係の深さを探る―」(右島和夫 群馬県立歴史博物館館長 10月1日)を開催した。
2018(平成30)年度は、開館以来の入館者数が50万人を超えた。5月に「こどもオリンピック」を開催し、競技会などを行った。7月にはマコモで七夕馬を作るイベントを行った。本年度の入館者数は、49,967人を数えた。
企画展では、西田町の遺跡・遺物を紹介する「西田町の遺跡展」(4月14日~5月27日、9,634人)を行った。また、企画展「倭の五王の時代の郡山」(7月7日~8月26日、7,943人)を実施するとともに、企画展記念講演会「倭の五王の時代」(森公章 東洋大学教授 7月8日)を開催した。企画展「縄文時代の地域交流」(10月27日~12月9日、4,745人)、歴史講演会「大安場古墳群と4世紀のヤマト王権」(松木武彦 国立歴史民俗博物館教授 12月2日)を開催した。
2019(令和元)年度は、開館10周年を迎え、記念のセレモニーを行った。本年度の入館者数は、50,650人を数えた。
第1回企画展「FUKUSHIMA前期古墳アラカルト」(7月13日~9月1日、6,972人)を実施するとともに、10周年企画展記念講演会「大安場古墳と東北の古墳時代」(辻秀人 東北学院大学教授 7月21日)を開催した。歴史講演会「東北の古墳時代前期を考える」(菊地芳朗 福島大学教授 10月19日)を実施するとともに、10周年を記念してのシンポジウム「10周年シンポジウム はま・なか・あいづの前期古墳」(10月20日)を実施した。第2回企画展「湖南町の歴史」(10月26日~12月22日、6,444人)を行うとともに、第2回企画展記念講演会「郡山市湖南町における戊辰戦争期の陣地遺構」(小暮伸之 福島県文化センター歴史資料課専門学芸員 11月24日)を開催した。
2020(令和2)年度は、郡山市の「新型コロナウイルス感染症に係る市主催等イベントの開催等及び市有施設の開館に関する指針」により4月18日から5月18日までガイダンス施設は休館となった。また、福島県沖地震による安全確認のため2月14日から2月17日まで休館となった。当初計画していた「古墳まつり」・「歴史散歩」などは、新型コロナウイルス感染拡大防止のため中止した。本年度の入館者は、31,834人を数えた。
第1回企画展「群集墳の時代―7世紀の郡山―」(7月11日~8月30日、5,404人)は、郡山市内の後期古墳および出土遺物を紹介する展示もので、展示とともに、第1回企画展記念講演会「東北の群集墳と横穴式石室」(草野潤平 山形県埋蔵文化財センター 7月26日)を実施した。第2回企画展「富久山町の歴史」(10月24日~12月20日、6,173人)は、富久山町の遺跡・遺物を紹介する展示で、第2回企画展記念講演会「縄文土器の年代と地域性」(三浦武司 公益財団法人福島県文化振興財団 12月13日)を開催した。そして、歴史講演会「王たちの経営戦略―5世紀の古墳時代社会―」(若狭徹 明治大学准教授 10月18日)を実施した。
2021(令和3)年度は、5月に「古墳まつり春」を行い競技会等を行った。8月には、東京パラリンピックの開催に際し古代の技法を用い種火おこしが行われた。これは、聖火リレーに使う種火おこしを各地で行う一環として実施されたものである。「福島県まん延防止等重点措置」の適用により8月23日から9月23日まで休館した。3月16日に発生した福島県沖地震による施設安全確認のため、3月17日に施設を休館とした。また、地震により、大安場1号墳の後方部墳頂復元展示施工部(10m×4m四方)を中心に幅1~3㎝程度の亀裂が入っていることを確認した。そのため、3月18日から墳頂部亀裂のため大安場1号墳は立入禁止とした。当年度の入館者は29,953人を数えた。
第1回企画展「東北地方における古墳時代中期の集落 清水内遺跡」(7月10日~8月29日、4,041人)は、祭祀遺跡や首長居館が確認された東北地方有数の集落遺跡である清水内遺跡を紹介する展示で、関連する第1回企画展記念講演会「古墳時代祭祀の実態―最近の調査・研究成果から考える―」(笹生衛 國學院大學教授 7月25日)を開催した。また、第2回企画展「逢瀬町の歴史」(10月23日~12月19日、4,667人)は、逢瀬町の遺跡および遺物を解説する展示で、関連イベントの第2回企画展記念講演会「縄文時代中期後半の生活文化」(菅野智則 東北大学埋蔵文化財調査室准教授 12月12日)を開催した。そして、歴史講演会「弥生時代の福島の魅力」(石川日出志 明治大学教授 10月16日)を実施した。
大安場史跡公園は、大安場古墳の周知と理解を図るとともに、文化財の紹介などを行ってきた。開館から10年余りが経過しているが、最新の情報を発信する施設・地域を顧みる施設として、その存在意義が高まっている。