2008(平成20)年3月24日に郡山市が「音楽都市」を宣言した。市内の小・中・義務教育学校も長年にわたって音楽教育に熱心に取り組み、「楽都郡山」としての歴史を築いてきた。この音楽教育の中心的指導者らが属しているのが、郡山市音楽教育研究会(通称“音研”)である。1964(昭和39)年に発足し、会長には音楽に長けた校長が当たっており、音楽教育の充実及び音研の運営と発展に尽力してきた。
郡山市教育委員会と音研が主催する郡山市小中学校合唱祭・合奏祭・創作祭は、2021(令和3)年に74回目の開催となった。毎年多くの小・中・義務教育学校が参加し、その参加校数は県内でも群を抜いている。
2020(令和2)年、新型コロナウイルス感染症が世界中で猛威を振るい、学校の音楽教育においては、合唱や管楽器演奏は感染リスクの高い活動とされ、これらの活動の実施に慎重さが求められるとともに、状況によっては活動を一時的に控えるなどの策も講じられた。そして、このことにより、2020(令和2)年度の郡山市合唱祭・合奏祭・創作祭は、中止となった。東日本大震災で大きな打撃と悲しみに襲われた2011(平成23)年の合唱祭・合奏祭は、開催が危ぶまれたものの、音楽によって心に火を灯そうという思いのもと通常通り運営された経緯があったが、2020(令和2)年度は全国的にも各種コンクールが軒並み中止となった。
翌2021(令和3)年。例年、市合唱祭・合奏祭を行っていた会場である郡山市民文化センター(けんしん郡山文化センター)は、同年2月13日に発生した地震により建物に大きな被害を受け復旧工事が急がれた。この間、当センターが使用できなくなったため、合唱祭はグランドピアノのある中央公民館、合奏祭は宝来屋郡山総合体育館で開催した。体育館は音楽を目的としたつくりではなく、少しでもよい音響下で子どもたちに演奏させたいという音研の教師たちは、音響反射板をミューカルがくと館から総合体育館に運ぶなどしてよりよい運営に努めた。こうして、中止や開催場所の変更といった幾多の運営危機に襲われながらも、音楽を愛する教師らによって、工夫しながら合唱祭・合奏祭は継続され、関係者らに安堵感をもたらした。しかしながら、この間、教育界においては働き方改革や部活動の地域移行などの声が沸き起こるとともに、コロナ禍における特設活動の解消、保護者や児童生徒個々のニーズの多様化等さまざまな変化が顕れ、同祭への参加校数は年々減少している。これは、本市だけではなく、福島県内はもとより全国的に見られる傾向である。このほか、音研主催の行事としては、前述の他に研究部による合唱交流会、オーケストラフェスティバル、バンドフェスティバルがある。これらは、ともに音楽を愛好する児童生徒や教師らが交流を図る楽しい場となっており、研究部の教師が企画・運営を担っている。コンクール至上主義にならない音楽本来の楽しみも見い出している場である。