(3) 震災と民俗芸能

 東日本大震災で郡山市は大きな被害を受けたが、郡山市よりも震源地に近い浜通りでは被害はより深刻であった。そのような地域から郡山市は避難者を受け入れており、浪江町、双葉町などからの避難住民がみられた。避難住民に民俗芸能を披露する機会もみられ、市内の民俗芸能団体だけではなく、それぞれの避難住民の地元の民俗芸能団体も訪れ、民俗芸能を披露した。

 反対の事例として、「柳橋の歌舞伎」の柳橋歌舞伎保存会は2014(平成26)年に南相馬市で歌舞伎を上演し、市民らを元気づけた(『福島民友』2014年11月3日)。

 本来、民俗芸能は元々奉納されてきた場所で行われ、民俗芸能大会等への参加を除けば、ほかの場所ではみられないものだが、震災という故郷を離れなければならない事態に対して、故郷を懐かしんでもらえるように、地元の民俗芸能が異なる地で行われるのは、震災といった特異的な状況の中でこそ、みられたものだろう。

 故郷を離れるといった事態の中で、「ふるさとを懐かしむ」ことができたのは、避難者にとっても、心の癒しになったのではないだろうか。