これまで、東日本大震災と新型コロナウイルス感染症の影響下における民俗について述べてきたが、この10年間で、久しぶりに行われた民俗行事について取り上げる。
郡山市湖南町中野地区に伝わる「熊野講渡し」が2016(平成28)年7月23日に行われた。前回行われたのは1998(平成10)年になる(『福島民報』2016年7月28日)。
この行事は、伊勢・熊野に参宮した人たちが村代々の本陣に報告を行う行事である。前回参宮した人たちが奉行所の役人に扮し、参宮した人たちが報告を行い詮議された後、大名行列の役を言い渡され、それぞれの役の衣装を身に着けて地区内を練り歩く。
この行事は定期的に行われるものではなく、『郡山市史 続編2』の記述によれば、戦前の1941(昭和16)年、戦後の1956(昭和31)年、1970(昭和45)年、1976(昭和51)年、1986(昭和61年)に行われている。定期的に行えないのは、地区では前回参宮した人たちから、講の譲り渡しを受けなければならず、渡す側と受ける側の人数が揃わないと行事が行えないためである。
民俗行事を行うのが難しい期間の中で、こういった行事が行われたのは喜ばしいことである。
(文化スポーツ部)