(4) 動物

 次に、環境省が行っている「自然環境調査」を基に、郡山市における動物分布について検討することにしたい。本冊子の期間中に「自然環境調査」では「中大型哺乳類分布調査」(タヌキ・キツネ・アナグマ)と「要注意鳥獣(クマ等)生息分布調査」(アライグマ・ハクビシン・ヌートリア(郡山地区では分布を確認できず)、クマ類、カモシカ)の二種類の調査が行われている。

 「中大型哺乳類分布調査」は、第6回調査(2004(平成16)年結果発表)と第7回調査(2021(令和3)年結果発表)の比較から、分布地域の変化をとらえていくことにしたい。図7は、郡山市におけるタヌキの分布を示したものである。タヌキは第6回調査では郡山市内の幅広い地域に分布していたが、郡山市中心部と磐越西線沿線部では確認されていなかった。しかし、今回調査では西部の猪苗代湖周辺地域を除き、全域で分布が認められている。また、タヌキが認められなかった西部地域もタヌキが存在しないのではなく、発見されなかっただけと考える方が妥当であろう。次に、図8にキツネの分布図を示した。キツネはタヌキに比べると狭い分布域しか持たず、第6回調査では中心部を取り囲むように北から東側を経由して、南から西側へと分布していた。これに対し、第7回調査では磐梯熱海方面での分布が新たに確認された一方で市街地周辺では未確認地域が拡大している。キツネは都市化地域では逆に分布を縮小していると言える。最後にアナグマを図9に示した。アナグマは第6回調査では西部と東部の山地帯の中でのみ確認されていたが、第7回調査では両側から市街地側に分布地域が拡大している。アナグマもタヌキと同様、市街地に向けて分布地域を拡大していると言える。


左上:図7 タヌキの分布図
右上:図8 キツネの分布図
左下:図9 アナグマの分布図
出所:『中大型哺乳類分布調査』環境省から作成

 次に、「要注意鳥獣(クマ等)生息分布調査」を取り上げる。この調査も第7回調査(2007(平成19)年)と第8回調査(2018(平成30)年)を比較しながら分析していきたい。まず、アライグマについてみると(図10)、第7回調査では市街地附近にのみ分布が認められたが、第8回調査では市街地東方の広い範囲と西部の一部にも広がっている。短期間の間に分布地域を急速に拡大している。同様の傾向は、ハクビシンについても言える(図11)。ハクビシンは第7回調査では確認されなかったが、第8回調査では非常に広い地域に分布している。アライグマ以上に急速に分布地域を拡大している。

 クマ類は第6回調査(2004(平成16)年)と第7回調査(2019(令和元)年)との比較になるが、やはり分布地域を拡大している(図12)。ここで注目されるのは、東部の阿武隈川以東地域でもクマが確認されていることである。クマは多くの人的被害を出すため、対策の強化が必要である。最後にカモシカの分布の変化を示した(図13)。カモシカはこれまで西部の山地帯の中で確認されていたが、第7回調査では市街地附近でも確認されている。これらの背景には山地域での人間活動の縮小があるものと考えられる。今後は市街地内での各種動物の活動が拡大していくものと考えられる。それへの対策が課題である。


図10 アライグマの分布図


図11 ハクビシンの分布図


図12 クマ類の分布図


図13 カモシカの分布図
出所:『要注意鳥獣(クマ等)生息分布調査』環境省から作成