3 自然と教育

 地球温暖化が大きな問題となり、2015(平成27)年の気候変動問題に関する国際的な枠組み「パリ協定」では、2020(令和2)年以降の温室効果ガス削減に関する世界的な取り決めが示され、先進国を含む国際社会全体の目標として、「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)が採択された。

 郡山市においては2010(平成22)年度より「郡山市第二次環境基本計画」を策定し、「人と環境にやさしい持続可能なまち」の実現に向けて、官民一体となって環境保全に取り組むこととなった。学校における環境教育も温室ガス削減を目指すエネルギー教育や省エネを目指す取り組みが数多く行われるようになってきた。

 2011(平成23)年の東日本大震災によって、福島県は地震・津波・原発事故による放射能汚染と「複合災害」を経験した。他の被災県と異なるのは放射能汚染問題である。郡山市内の小・中学校は、事故後の2011(平成23)年4月から翌年3月までは、小中学校の屋外活動の目安を「1日あたり授業1時間、課外活動2時間の計3時間以内」としてきた。この基準により、特に観察や実験といった野外での自然体験学習や屋外での環境学習ができない状況になった。

 <参考例>

1 時間の目安

・平日 体育などの屋外活動:1時間以内  部活動:2時間以内

・休日 部活動:3時間以内

2 留意点

・雨天時や風が強く砂ぼこりなどがひどい場合は行わない。

・屋外での活動後には、うがい、手洗い、洗顔をし、靴底の泥を落とし、服についたほこりを払い落としてから教室に入る。

・土や砂を口に入れないように注意する。

 この状況下から環境教育は、「放射線教育」「自然災害と防災教育」が課題として模索されるようになった。郡山市の放射線対策による小・中学校、保育所の除染は、2011(平成23)年、校庭の表土除去、2012(平成24)年、プール及びプールサイド並びに校舎屋上や校地内の外周部等の除染が行われた。これらの対策により、放射線量が低下したため「屋外活動の自粛・制限を解除すること」になり、非常時を乗り越えるため、学校現場では基準の中での活動を手探りで展開するようになった。放射線対策により、少しずつ問題状況は改善されていったが、放射線に対する不安が大きく、これまで活動の中心であった屋外での自然観察や自然体験をこれまで通り実施するには、事故後5年を経過しても難しい状況であった。

 また、2008(平成20)年に改訂された学習指導要領による学校教育は、小学校は2011(平成23)年度から、中学校は2012(平成24)年度から、高等学校は2012(平成24)年度から理科と数学が本格的に実施されるようになった。この改訂では、これまでより学習内容が増加し、授業時間数も増加するようになった。新しい教育内容が始まるのと同時に、放射線問題から、学校現場では環境学習にも関わる理科の実験・観察等を見送る状況が出てきた。そして総合的な学習の時間や教科指導の中で「放射線教育」と「自然災害と防災教育」が新たに指導内容に加えられるようになった。

 福島第一原発事故後のわずか7ヵ月後の2011(平成23)年11月に、文部科学省は「放射線等に関する副読本の作成について」という報道発表をした。この副読本は、1.東京電力福島第一原子力発電所の事故により、放射線や放射性物質、放射能に関する関心が高まっていること。2.このような状況において、国民一人ひとりが放射線等についての理解を深めることが社会生活上重要であること。3.小学校・中学校・高等学校の段階から、子どもの発達段階に応じ、自ら考え判断する力をつけるために必要なこと。以上の作成目的を述べている。

 学校現場では学習指導要領の改訂に加えて、「放射線教育」の実施が大きな課題となり、教育内容と授業時間の狭間で大きな課題を背負うことになった。

 2019(平成30)年には「郡山市ふるさと再生除染実施計画」に基づく除染がほぼ終了し、学校の校地内にあった除去土壌が「中間貯蔵施設」へ搬送され、一般住宅や農地の除染なども行われ、放射線に関する不安が解消されてきた。

 また、2019(令和元)年、自治体によるSDGsの達成に向けた優れた取り組みを行う都市として、郡山市が県内で始めて「SDGs未来都市」に選ばれた。