序文

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越谷市長 黒田重晴

 「知ることは愛することのはじめである」という言葉があります。郷土を知ることがやはり郷土を愛する心情ともつらなり、さらに郷土の将来を真剣に考える手がかりにもなると信じています。

 すでに越谷市では急激な都市化の波に対応し、昭和四十三年度から市史編さん事業を発足させ、郷土の歴史の調査に着手してまいりました。以来市史編さんでは歴史諸史料の収集をはじめ、その保存措置に力をつくすとともに、調査の年次報告書や、本編市史の史料編を逐次刊行してきました。

 今回発刊をみた市史通史編は越谷市の歴史を平易に叙述したもので、市史史料編と合せみることにより、きわめて意義のある郷土の事典となるものと信じます。

 ご承知のように、越谷市には著名な史蹟や名所もありませんが、長い歳月にわたり、営々として郷土を守り育ててきた庶民の生活が歴史の重みを支えて横たわっています。名もない私達先祖の生活が、どのように世の中の変革に対応し、かつ世の中の変革を推進してきたか、その一端が市史に織りこまれているはずであります。

 しかし限られた頁数の市史ではその一部にふれただけであり、これを踏み台として今後も郷土の歴史研究が一層さかんになることを期待して居ります。

 終りに本書の刊行に並々ならないお骨折を願った市史編さん委員、ならびに市史の監修者をはじめ編集員の方々に深く感謝申し上げるとともに、資料の提供その他でご協力をいただいた関係各位に心からお礼を申し上げます。

  昭和五十年三月