自由地下水

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地下水には、自由地下水と被圧地下水とがある。このうち越谷地方の自由地下水は、県内で最も浅い位置にあり、平均地下五メートルといわれる(第8図)。この自由地下水は、妻沼―栗橋間の利根川中流部や熊谷付近の荒川上流部から浸透した河水が、自然堤防を地下水谷として南下したものである。とくに前者の流量は大きく、平均毎秒一・三立方メートルを維持している。そして平均三〇〇〇分の一から五〇〇〇分の一の緩傾斜をもって流動し、一部は排水路や元荒川、古利根川等の集水河川に滲出し、これらの河川の涵養水となっている。とりわけ非灌漑期の元荒川や古利根川は、自由地下水によってかろうじて水流を保っている。たとえば埼玉県中川工事事務所の調査結果によると、非灌漑期の十月から翌年の四月までの中川の流量は毎秒五立方メートルであるが、同じく綾瀬川の流量はほとんどゼロにちかい。一方五月から九月にかけては、降雨による特殊な出水を別にすれば、中川が毎秒二〇立方メートル、綾瀬川が毎秒六~七立方メートルとなっている。以上のことから、非灌漑期の中川の維持水量は、自由地下水によって涵養されていることが考えられるわけである。

第8図 越谷周辺の水理状況(資源科学研究所資料より作成)
冬季非灌漑期の古利根川(大吉付近)
夏季灌漑期の古利根川(大吉付近)

 越谷地方では、利根川中流部のように、河川水が伏流して地下水になることはまず考えられない。それは、河川水と地下水が連続するためには、両者の間に高度差があること、河床を構成する物質と河岸の沖積地(集落や耕地のあるところ)を構成する物質とが同質であること、同時に透水性が高いことなどを必要条件とするが、越谷地方ではほとんどすべての条件を欠いているからである。すなわち、現河川から分岐する自然堤防がすくなく、堤防外を連結する透水性の高い同質の構成物―具体的には砂質土壌―を欠いていたこと、および集水河川のため、必然的に河床または水位は、両岸の水田面よりかなり低く維持されなければならなかったからである。