越谷地方において、量的に期待できる地下水は、洪積層中に含まれる被圧地下水である。被圧地下水とは、傾斜をもつ複数の不透水層にはさまれ、圧力を受けている地下水のことで、圧力の強さによっては自噴することもある。以下ごく大まかに、被圧地下水の賦存(存在)状態を中心に要約してみよう。越谷地方の被圧地下水の客水基盤は洪積層であり、この洪積層は、栗橋、幸手付近の中央低地では地下約三〇〇メートル、同じく川口、草加付近では四〇〇~六三〇メートルの深さをもって分布している。洪積層は数層にわたって堆積し、主要帯水層だけでも地下四〇~六〇メートルのD1層、一八〇~二〇〇メートルのD2層、三五〇メートルのD3層に分かれている。このうち水量的にみて、最も有望な帯水層は、D2層であるといわれている。
昭和三十八年と四十四年におこなわれた一〇〇メートル以上の深井戸の電気伝導度、塩素量、水温等に関する調査資料「埼玉県地下水水理調査報告書、資源科学研究所、昭和四十四年」によると、越谷付近は、伝導度、塩素量、PHのいずれも高い数値を示し、これと洪積底面等深線とからめて考察した結果、越谷市から北にかけての古利根川流域下の豊富な地下水集団の存在が、推定されるようになったものである(第8図)。ところで、越谷地方に限らず埼玉県東部の深層地下水は、造盆地運動との関係から、南に高まりをもつ堆積盆に貯えられている。したがってほとんど流動性がなく、揚水によってわずかに動き得るような性格のものである。つまり、地下一五〇~二五〇メートル層における湖盆の水は、塩素、硬度、水素イオン濃度などの水質分析によって、洪積世海成の旧中川谷(古利根川谷)に帯水した化石水と考えられ、揚水されることによって補給され、漸次清水化される性格を示している。なお、カリウム、珪酸、ナトリウムの分析値からみて、水質は概して、余り良好とはいえないようである。