樹木植物と久伊豆神社の社叢

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越谷市の土地利用は、おおまかにいって耕地の六五%、宅地の一五%に対して、山林・原野は一%にも満たない。このため市内にはまとまった平地林はなく、わずかに農家の屋敷林、および社寺の社叢や境内林として、シラカシ、ケヤキを主とした林が散在する程度である。

 低湿な越谷市域を象徴する樹木としては、かつて一部の水田地域の畦畔にみられたハンノキがあるが、耕地整理や稲作技術の変化などのため抜去され、最近はごくまれにしかみられなくなった。現在では、樹木の大きさや樹令が評価されて、天然記念物の指定を受けた若干の植物と、小規模ながら原植生のおもかげを留める久伊豆神社の社叢とが、市を代表する樹木植物となっている。天然記念物としては、昭和十六年に県指定の文化財となった株廻り七・二七メートルの久伊豆神社のフジをはじめ、昭和四十二年に市の文化財指定を受けた林泉寺の駒止の槇(こまどめのまき)(推定樹令四〇〇年)、アリタキアーボレータ厶内のユリノキ、ラクウショウ(落葉樹)、同じく有滝邸内のタブ(暖帯林)などがある。

 久伊豆神社の社叢については、永野巌氏の調査報告を中心に要約するとつぎのとおりである。久伊豆神社の裏側には、社寺林として小規模ながら、スダジイ林が残されていて、かつての原植生を留めている。このスダジイ林の林相をみると、まず六メートル以上の高木層には、スダジイ、ヒノキ、タブ、モチノキ、ケヤキがあり、そこではとくにスダジイが優先している。六~三メートルの亜高木層には、ヤブツバキ、スダジイ、シロダモ、モチノキが出現し、優生群はヤブツバキである。さらに三メートル以下の低木層には、アオキ、シロダモ、サカキの優生群に混って、ニワトコ、アカメガシワ、クサギサネカヅラなどが茂っている。最下層の下草としては、ジャノヒゲ、フユノハナワラビ、メヤブソテツ等の植物が地表をおおっているが、なかでも、ジャノヒゲが圧倒的に優占し、いわゆるジャノヒゲ型の林床をなしている。

 ところで、高木層のエノキ、ケヤキ、低木層のニワトコ、クサギ、アカメガシワ、サンゴジュ、シュロ、ヤツデ、下草のイノコヅチ、ヌスビトハギ、ドクダミ、ハコベなどは、本来、スダジイ林の植物ではなく、それは人間の手によって移植されたか、風や小鳥たちによって運ばれてきた種子から生じたものである。そしてこのような植物群の定着を許した原因は、林地の規模が小さいことや社寺林の一部伐採などによるものと考えられている。なお、県南の都市化地域には、浦和市内の氷川女体神社や調宮神社の社叢のように、学術的に価値の高い植物群集があるが、越谷市内の久伊豆神社の社叢も同様の理由から、今後とも、その保全につとめなければならない大切な文化財である。

屋敷林のケヤキ(落葉した高木)とカシ(中央から左寄りの高い生垣)