毛長堀筋の遺跡

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自然川の消長、流路の変遷は市内を含めて県内各所に見られる。埼玉東部低地には、古代において太日川が流れ東京都との県境には毛長堀がある。毛長堀は今でこそ小さな流れではあるが、自然堤防の大きさ、川敷の砂礫の堆積から推定すると、縄文時代から弥生時代まで埼玉西部山地の諸河川、すなわち和田川、吉野川、市ノ川、入間川などの水を集め、現荒川の東側大宮台地の麓を南下し、南浦和台地の南縁から東進して川口、草加と東京都の県境を流れていた大河である。この川の自然堤防上には縄文時代の終りから弥生時代、そして県境付近では古墳時代以降までの遺跡が数多く散布している。北西の季節風によって東京都側の自然堤防の発達は著しく、第3表、第7図のようになっており。埼玉東部低地に比較し、より早くから人びとが住んでいたことがわかる。

第3表 毛長堀(足立区)の遺跡
場所 時代 出土品 環境など
舎人町氷川神社 古墳、歴史 土師器、須恵器、土錐
入谷氷川神社 歴史  〃   〃   〃
入谷 古墳  〃   〃   〃
東伊興町 古墳 土師器、須恵器、土錐、石製模造品 円墳
 〃 古墳、歴史  〃   〃   〃   〃
 〃  三〇 古墳  〃   〃   〃   〃 円墳
 〃  〃   〃   〃   〃  〃
 〃 直刀、埴輪  〃
 〃 縄文、弥生 縄文土器、石族、弥生土器 伊興遺跡
古墳、歴史 土師器、須恵器、土錐、石製模造品 (一万平方m2散布)
土製模造品、玉、鏡 標高3m
 〃 弥生、古墳 弥生土器、土師器、須恵器、土錐、砥石、鉄器、勾玉、玉、石製模造品 狭間遺跡
紡錘車、有孔円盤 標高3m
花畑 弥生、古墳 弥生土器、土師器、須恵器、土製模造品 散布地
花畑鷲神社 縄文、弥生 縄文土器、土師器、須恵器、砥石 散布地 標高3m
第7図 毛長堀の遺跡分布

 越谷市見田方遺跡に近接し、自然環境の似通った前述の三ヵ所の遺跡を概観すると、上流の杉戸町の遺跡はすでに破壊された後で明確なる遺構はつかみ得ないが、古墳時代後期すなわち見田方遺跡とほぼ同時期である。これに対し下流の葛飾区、江戸川区の遺跡には弥生時代のものがある。