石製模造品

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古墳時代の遺物のうち軟質の石材をもって各種の形を模造し、祭祀のさいなどに用いたものを石製模造品と呼んでいる。武器、武具、服飾具、農工具、酒造具、機織具そのほか馬、人形などの模造である。石製模造品の出現はほぼ四世紀の後半で、同種多量化の傾向は五世紀に入ってからである。古墳の副葬品として出土する場合と祭祀遺跡から発見される場合とがある。祭祀遺跡出土品のほとんどが滑石製の小形品であることからすれば、この種の石製模造品の用途は祭祀関係のものとみることができよう。

 本遺跡からは第41図の36、37、38の三個の有孔滑石製品が出土している。半月あるいは勾玉の形をした小形品で表面に擦痕があることから紐を通して使用したものであろう。ほかに滑石製小玉が五六個出土している。第41図の40のように小さな玉で、厚さ二~六ミリメートル、直径六~八ミリメートル、孔径二ミリメートルで穴は真直ぐにあけられているが、中には斜めにあいたものもある。これも石製模造品の一種であるが、第41図の41の石製有孔円盤が出土している。滑石製で二つの孔があることから滑石製双孔円盤と名づけた。

 石製模造品が祭祀と関係あるとすれば、本遺跡においても何らかの祭祀が行なわれていたものと考えられる。どんな祭祀であったかは知る由もないが、古代原始信仰の多くが太陽、月など宇宙自然に対する神秘と恐怖と恩恵であったことからすれば本遺跡においてもこれに近い祭祀が行なわれていたことであろう。

 このほか石器として取上げることはできないが軽石(第41図の28~31)が出土している。生活用具として使用されていたものかどうか憶測する以外に実証できる痕跡が見当たらなかった。

祭具