祭神

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ところで延喜式内社のなかでも、名神大社に指定され武蔵国に濃密な分布をみせている氷川社の祭神は、素盞鳴命・大己貴命・奇稲田媛命の三柱としており、同じく大社に指定され下総と常陸に濃密な分布をみせている香取社の祭神は経津主命・武甕槌命の二柱としている。しかしこの祭神は後に付会されたものであり、はじめの氷川の神は出雲族の流れを汲む豪族を祭った氏神、香取・鹿島の神は中臣氏の一族を祭った氏神と伝えるものもある。この説は、古代の関東は大和から遠く離れた辺境であり、中央から任命された国造が中心となって開発された。このうち无邪志(武蔵)の国造は出雲族の系譜をひく兄多毛比命、下総の国造は大和朝廷をひく伊都許理命と久都伎直であるとする『古事記』や『国造本紀』の伝承に基づくものであろう。このほか氷川社や香取社の祭神は、そのはじめ在地農民の信仰に基づく素朴な農耕神であったとする説もある。