御朱印・御証文、あるいは御定賃銭による公用旅行者は、あらかじめ道中各宿の問屋に先触をもって通行の日時を通告し、必要な人馬を整えさせた。また公用旅行者の休泊に際しても、先触によって到着や出発の日時を本陣に通告し、その宿割りや賄い向の諸準備をさせた。しかし先触による予定日時が変更になったり、行列が延着することがあって宿場が混乱することもあった。ことに、本陣における公用旅行者の休泊に関しては、〝差合〟といって本陣利用者同志の争いが生じ、このため宿場が迷惑を蒙むることが珍しくなかった。すなわち先約で本陣に休泊した通行者に対し、後から来た者が身分格式を主張して本陣を明渡せと迫ることがあったからである。これら日光道中の本陣差合一件を、越ヶ谷宿本陣福井家の「御用書留」によってみてみよう。