序文

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越谷市長 黒田重晴

 人口の急増、都市化の進展、生活様式の変化など、現在の一年間における人びとの生活や環境の変化は、昔の十年あるいは数十年に匹敵するといわれる。私たちは好むと好まざるとによらず、このはげしい変動のなかに生きている。それだけに世の中や郷土の動向は、すでに個人の意志や希望とは関係なく独自に進行しているようにみえ、その疎外感は深まる一方である。

 こうしたとき、私達は今一度越谷の歴史をふりかえり、郷土と私たちとのかかわりあいを考えてみる必要があろう。幸いこのたび明治以降現在に至る越谷の歴史を叙述した『越谷市史』通史(下)の発刊をみた。良きにつけ悪しきにつけて私たちの多くが経験してきた郷土の変貌の一端がここに収録されている。身近な事柄だけに現在を考える上に役立つものと思われる。私たちはこの中から多くの教訓を学びとり、将来の越谷を心の故郷としていつまでも愛着がもてるような美しい土地に育てていきたい。自治体としての越谷市の歴史はいまだきわめて浅いため、現在統一のとれない部面もないではないが、将来必ずや調和のとれた自治体が、越谷の歴史を媒介に、なんらかの形で定着していくことを信じたい。

 『越谷市史』の刊行は、今回の通史(下)の発刊で一応完了したが、郷土の研究はこの越谷市史を足がかりにこれからである。同時に過去をふまえて将来の展望を展開させていくのも大いに望ましいことであろう。

 末筆ながら市史編さん事業関係者の、市史刊行に対するご尽力に深く感謝申し上げるとともに、今日までのたゆみないご努力に多大なる敬意を表す次第です。本当に御苦労様でした。今後とも越谷の文化向上のため、引続いてご尽力のほどをお願い申します。あわせて貴重な歴史諸史料の提供にご協力をいただいた諸家、ならびに文書館・史料館・各大学研究室などに対し、紙上ながら厚く御礼申し上げる次第です。

  昭和五十二年三月