内乱の情況

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支配者の交代がおこなわれている間、関東地方一帯は無政府状態となり、梁田戦争や羽生領一揆など各地で紛争が発生していた。当時の史料によると、「政令廃絶ヲ幸トシ、武州足立郡・埼玉郡之内ヘ、賊徒等姿ヲ百姓ニヤツシ、愚民ヲ誘ヒ、豪商富家ヲ毀チ、金銀ヲ抄掠シ、数百ヶ所ヘ及放火、既ニ官軍之後路ヲ断ントスルノ勢」(「復古記」三五五頁)であった。また、岩槻藩領でも「百姓共党ヲ結ヒ、有福之者ヘ押入、及強談、加之、放火致シ候」(「同前」三六八頁)ありさまであったという。川口村(現加須市)でも農民一揆が起っている。

 越谷地方も例外ではなく、小林・花田・向畑・川崎村々を中心に強盗の出没による金品強奪事件がしばしば発生し、治安は極度に乱れている。増林村では凶作や不景気による村びとの不穏な行動もみられたし、大間木村(現浦和市)を中心として西新井、長島村にもおよぶ小作料をめぐる地主・小作間の争いなども起っている。また、四丁野村を親村とする市域北部の村々では、村落財産の不正使用をめぐる訴訟事件も発生しており、越谷地方もまた内外より農村秩序が崩れ出していたのである。このような混乱した状況を克服しうる政権が、村々においても要請されていた。

大間木村小作騒動一件写