埼玉県の場合、総代人は金穀公借だけではなく町村内の貢租・民費の賦課に同席し、公平となるよう心がけ、町村の願書には戸長とともに連署することになっている。他県の場合より権限が広い。現実に総代人が選出されるよりさき、十年五月には「村町会仮規則」が布達された。公選議員により数町村の連合で町村会を開くこととされている。議員は二五戸に一名とし、総数三〇名以内とする。選挙権はその町村に本籍を有する戸主で、かつ正租を若干納めるものとされ、戸主ならば婦人にも与えられている。被選挙権は二〇歳以上の戸主で、その町村に一年以上住み、平均以上の地価を所有するものとされている。当時としては制限は緩やかであった。
これにより各村では議員が選出されている。袋山村の場合をみると、次のような委任状がとりかわされていた(明大刑博文書)。
委任状
這般、本県甲第四拾八号村町会被仰出候ニ付、該村一同投票ヲ以、議員ニ撰定スル上ハ、則一村之代人ニ付、右規則諸務ニ関スル百般ノ事務ヲ担当管理スル事ヲ委托ス、就而ハ足下等ノ公議ヲ以テ公平与而審議セン事ヲ一組一内ノ衆議ニ出タルモノトス、故ニ処分上ニ於テ他日聊異議ヲ生スベカラス、依テ誓約捺印スル如件
埼玉県第弐区
明治十年九月
埼玉郡袋山村
藤井織右衛門印
(他五七名略)
関根広吉殿
山崎芳太郎殿
細沼範十郎殿
選出議員に対し、選挙人一同が署名捺印して二一村の公議決定に参加することを委任し、かつその議決を守る誓約を行なっているのである。郵便報知新聞によれば、埼玉県の町村会は二五戸に一人の議員を公選し、四〇〇~六〇〇戸を会議組合とし、議員三〇名で互選された議長のもとで会議が開かれる旨を報じたが、実際には町村会がそれほど機能しないうちに、全国的に制度化されて再改正されるのである。