地位等級

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これよりさき、九年九月には地位等級の査定法が布達され、十月には地位等級を調査するための地主総代を選挙する心得書も頒布されている。十月二十日には二区内の村々の模範村となった越ヶ谷宿で、地味が考慮された地位等級の調査が着手される。十二月には「模範越ヶ谷宿地位等級目途」(「御用留」西方秋山家文書、)が決まり、これを基準に区内村々の等級決定が急がれている。

 結局、村々で等級が決定されるのは十年七月ごろである。この間、等級を下げることによって租税の軽減を求める村びとたちの、潜在的な願望が作業を遅らせていたのである。しかし、それでも公平ではなかったらしく、当局は次のような態度決定を村びとに迫っている。他県では改正はすでに終了しているから急がねばならないが、さらに時日を費して公平な収穫量が得られるまで待つか、あるいは提出された等級表にもとづいて、予想される収穫量を県側で配布するか、いずれがよいかを諮問したのである。二区村々では、まず各村で、ついで区内の区戸長会が開かれて協議した結果、「官定スル収穫ヲシテ、猶御下問之上、御施行アラン事ヲ要求」した。つまり、冗費節減のためこれ以上の費用がかかる収穫調査はやめ、県庁で見積った官定の収穫が配布されてもよいというわけである。こうして、県庁の見積りで決められた収穫によって等級が決定されている。越ヶ谷宿の水田を例にとれば、

      地位等級収穫地価調書

   一、田反別百五拾四町六反九畝歩 越ヶ谷宿

        収穫米弐千三百四石七斗九升

               反米壱石四斗九升

       内

   六等乙 拾七町六反三畝八歩

        収穫米三百四石壱斗六升四合

               反米壱石七斗弐升五合

   七等甲 八町八反五畝歩

        収穫米百四拾六石弐斗五合

               反米壱石六斗五升

   七等乙 四拾壱町七反九畝四歩

        収穫米六百五拾八石弐斗壱升四合

              反米壱石五斗七升五合

   十三等乙 弐町四畝拾三歩

        収穫米拾三石壱斗四合

              反米六斗四升壱合

となっている(「田畑等級収穫帳」七左衛門井出家文書)。越ヶ谷宿のもっとも土地生産力の高い、平均反当り収穫量一石七斗二升五合の土地は、等級でいえば六等乙となっているが、これは埼玉県全体の等級表に位置づけられているためである。この関係を第10表でみれば、埼玉県の一等地は反当り二石五斗五升の土地を一等甲とし、畑は反当り収穫麦二石九斗の土地を一等甲とし、一八等までおのおのを七升五合の差にして甲乙に区分している。このほか類外等と称する三等にわたる等外地もある。この全県的な体系において、反当り一石七斗二升五合の土地は六等乙に相当するのである。このようにして、越ヶ谷宿あるいは市域の村々はもちろん、全県下の村々の土地が、一筆ごとに反当収穫量に応じて体系化されたのである。

第10表 埼玉県・越ヶ谷宿地位等級比較表
埼玉県 越ヶ谷宿
等級 田(米) 畑(麦) 田(反別) 畑(反別)
1等 2.55 2.9
2.475 2.825
2等 2.4 2.75
2.325 2.675
3等 2.25 2.6
2.175 2.525
4等 2.1 2.45
2.025 2.375
5等 1.95 2.3
1.875 2.225
6等 1.8 2.15
1.725 2.075 17.6308
7等 1.65 2.0 8.85
1.575 1.925 41.7904
8等 1.5 1.85 14.0509
1.425 1.775 62.5120 4.4214
9等 1.35 1.7 1.8624 3.9901
1.275 1.625 1.8011 5.5803
10等 1.2 1.55 2.7904 13.6323
1.125 1.475 18.9818
11等 1.05 1.4 2.6302
0.995 1.325 5.24
12等 0.9 1.25 0.7616
0.825 1.175 0.4700
13等 0.75 1.1
0.675 1.025 2.0413
14等 0.6 0.95 3.4329
0.525 0.875
15等 0.45 0.8
0.375 0.725
16等 0.65
0.575
17等 0.5
0.425
18等 0.35
類外1 0.3 0.3
類外2 0.25 0.25
類外3 0.2 0.2

(明治11年6月)

明治11年「田畑等級収穫帳」七左町井出家文書