審議の実態

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そこで町村会の審議の状況についてみておこう。市域村々では十三年二月に最初の村会が開かれているので、まずこの村会から検討してみよう。

 審議結果を郡長へ報告した「村会決議書」によって、上・下間久里村、大里村会の様子をみると第27表のようになる。県布達の町村会規則によると、議事項目は五款あった。表によればそのうちの第二款、「其町村限リノ経費ヲ予算シ及ビ其課賦法」しかきめられていない。ほかに地方税の戸数割率はきめられてはいるものの、町村固有の事業や共有財産、土地金穀の借入れなどはこれら村々には関係なかったのかもしれない。第27表の決議項目をみると、若干の細目に相違があるものの大綱目は三村とも同一である。これは郡役所より決議報告の様式が示されていたこと、村会審議の中核が村費の予算・決算の審議におかれていたことを示している。用水・土木費を中心として、神社・祭礼費や地租改正残務費の多額な村費のしくみを知ることができよう。これらは地価割・反別割の半々で徴収されている。

第27表 明治13年村会決議
―明治12年度協議費精算表―
費目上間久里下間久里大里
円 銭厘円 銭円 銭
河川堤防道路橋梁建築修繕費60.05.571.7276.70
  村道路修繕費8.09.03.44
  陸羽道掃除費0.800.722.80
  広橋修繕費7.50
  須賀用水堀藻刈費1.680.756.0
  元荒川千間堀悪水路藻刈費2.76.92.652.10
  須賀用水路浚費2.41.92.404.25
  千間堀悪水路浚費1.88.71.201.80
  悪水吐伏越樋伏換費35.040.028.40
  用水埋圦修繕費15.0
  田方水配費25.25
  堰守給2.50
惣代人立会之節弁当料2.882.883.60
地租改正残務諸費16.016.012.60
会場費0.992.01.52
村社営繕及祭事諸費39.025.09.20
通計118.92.5117.60103.42

明治13年「村会決議書」(市史編さん室文書)

 つぎに連合町村会についてみてみよう。連合町村会には明治十二年の町村会成立にともない、各村の議員の代表者が水利・共有財産・学校などの、連合村々に共通する問題を審議するものと、十七年五月以降の連合戸長役場で開かれるものとの二種がある。両者は性格がことなるので、まず前者について、共有財産の問題についての連合村会の場合をみておこう。

 かつて小菅県・浦和県の時代にはじめられた凶荒予備金の制度は、埼玉県となっても報恩社金、民務準備金などと称し運用されていたことは第二章五節でみてきた。これら予備金は三新法による郡制施行後は、その管理運営は関係町村にゆだねられている。そこで旧二区の村々二八ヵ村が四丁野迎摂院に会し、維持方法を決定する連合町村会を開設すべく協議したのは十四年一月二十三日である。村会規則、議員数などを決定し、二月には認可されている。これにもとづき三月上旬、早速連合町村会がひらかれ、維持方法が決定された。管理者に細沼貞之助、榎本健蔵、井出庸造、野口八郎右衛門らをえらび、従来どおり各村の希望者に貸付けて、年利一割二分を得て増殖をはかることになった。借入れ希望者は抵当を必要としたところから、相当の担保地をもち、かつ年利を負担しうる人でなければならなかったから、村内でも上層の人びとに貸付けられている。