このときの調査によれば、町村会議員の選出および町村会の景況は、どこの町村も競争もなく平穏無事である。大字（旧村）ごとの人口に応じて、議員は選挙まえの話合いで内定していたからであろう。「当選ノ希望ヲ抱キ奔走スルモノ」もいたようであるが、概して平穏であったという。県政、国政レベルにおける自由党・改進党の対立も、村政まではおよんではいないのである。

　町村会もまた「平穏無事ニシテ記スコトナシ」という状況であり、会議はまったくの相談会であった。新方村では論争とまではいかないまでも議論がおこなわれている。いかなる内容かは不明である。このような町村会の審議の変化についてみておこう。

　出羽村の場合、明治二十二年より三十年までは、三月の予算編成の通常村会と六月の決算認定の通常村会が主で、ほかは条例制定（二十二年）、役場新築（二十五年）、出兵家族慰問・戦死弔祭金出資法、学校増築（二十七年）、郡費負担額徴収法（二十九年）などで臨時村会が開かれたにすぎない。三十一年以降になると、通常村会のほか伝染病予防費使用法（三十一年）、中学校敷地・戸籍取扱費徴収法（三十一年）、衛生費追加案（三十三年）、学校焼失につき諸費徴収法（三十三年）、罹災救助資金貯蓄管理法（三十四年）、越ヶ谷高等小学校負担金徴収法（三十四年）などの臨時村会が年度の前半に集中する。三十七、三十八、三十九年は通常村会のみであるが、四十年よりは再び道路橋梁修繕（四十年）、小学校・駐在所敷地購入法（四十一年）、小学校基本財産蓄積条例、歳入出追加予算（四十二年）、予算更正および基本財産蓄積法（四十三年）、土木費追加（四十四年）などの臨時会が多くなる。このような村会の開会数の多少は、そのまま村費の増減に反映する。町村事務量もまた相関を示すことは、先の図と比較すれば明らかとなる。この間、出羽村会は定数一二名の村会議員で審議されるはずであったが、流会は一度のみで出席は毎会平均八～九名であった。

　次に桜井村の場合についてみておこう（第90表）。通常会のほか村会議員出席の協議会も記されているためか、流会が目立つが、審議内容は村長・助役・収入役選挙のほか教育、土木に関するものが多く、時期的に罹災資金も問題となっていた。これら町村会の議事録をみるかぎり、原案修正などはほとんどなく、ほとんど原案通り決定されていたらしい。まったく相談会であったといえよう。上の図は出羽・増林・蒲生村の町村費歳出決算の変化をみたものである。