新方領

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越谷地域の耕地は、市内の中央を流れる元荒川を境に二つの耕地に大きく分けられる。その一つは、末田大用水によって灌漑される越ヶ谷領耕地であり、一つは須賀堀用水系統による新方(にいがた)領耕地である。領とは近世に用いられた地域名で、中世の郷や庄の区域が近世の領として残された場合が多いが、いずれも水利その他の地縁的結合の強い地域となっている。

 このうち新方領は、元荒川と大落(おおおとし)古利根川にはさまれているうえ、大吉地先から大沢地先にかけて通称逆川と呼ばれる葛西用水が新方領を横断し、かつ領の北端は古隅田川によって画されている。つまり新方領は四本の流れによって包みこまれた耕地面積四〇〇〇町歩に及ぶ地域である。四方を川によって包みこまれたこの新方領耕地の排水は、豊春村(現春日部市)から源を発し、新方領を貫流して増林村増森新田から元荒川(のちに古利根川)に落される千間堀が唯一のものであった。しかし千間堀の排水機能は、昭和初期の千間堀改修まできわめて悪かったため、一たび豪雨があると、領内耕地に水があふれ、しかもその湛水期間は十数日に及ぶことも珍しくなかったといわれる。