訴願事件の発生

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大正三年五月二十五日、越ヶ谷町は、越ヶ谷町議会の町税徴収方針に対する郡役所の措置を不服とし、郡長を相手どって県知事宛に訴願書を提出した。この訴願の主旨は、町議会が決定した大正三年度越ヶ谷町税の県税雑種税不均一賦課に関する申請に対し、不認可処分としたことは町村制に違反するということであった。県税雑種税とは、府県税に属する舟、車、湯屋、俳優、演劇興業、寄席などの諸税である。ここではとくに車税が問題になった。

 そして訴願の内容は次の通りである。第一に町議会決議のまえに県税雑種税および新設された不動産取得税、電柱税に関し、不均一課税の方針と課率制限の有無を内申した際、「内意トシテ示スヘキモノナシ、殊ニ課率ノ制限ハナシ)(越谷市史(五)七七七頁)と返答があったにもかかわらず、その方針にそって上申した町議会決議の不均一賦課方針を否定したのは、勝手な変更であり町自治をおかすものである。

 第二に越ヶ谷町の町税納入成績は、従来の滞納のくり返しから大正元年より良好となり、二年には完納するまでに向上したが、これは不均一賦課の方法を導入し、町税滞納者の多い戸数割付加税(旧称戸別割)や雑種税のうち車税を納めるものに「町ノ負担ガ公平ニ分任」(同前)するよう配慮した結果である。このように元年・二年の両年度の不均一賦課の方針を許可しながら、大正三年に不許可とするは納得しがたい。

 第三に新設の不動産取得税、電柱税についても不均一方針が違法ならば、ただちにその旨通知すべきにもかかわらず、納税期限間近にこのような処分をするは不当である。

 第四に郡長が「其筋ノ意見」として示す点は、戸数割付加税が一戸平均五円を賦課する町村以外は認められないとするが、これは町村の現実を無視しあまりにも法規的、消極的すぎる。

 第五は消防費の町費支弁に関する指示は、町自治を無視し町村監督権を誤用するものである。

 この対立は、帰するところ、町村自治を基礎とする不均一賦課方針の認可を得ようとする点にあったのである。

昭和30年頃の越ヶ谷本町通り